「自社ならではの強みは何か」「果たしてそれはあるのか」。企業の長年のテーマの一つで、差異化には不可欠な要素。個人に関しても言えるかもしれない。
商社の繊維事業はここ数年、新規事業の創出や異業種への参入、DtoC(メーカー直販)強化など次なる成長を目指し様々な手を打ってきた。アパレルOEM(相手先ブランドによる生産)に頼るビジネスモデルの限界が見えているためだ。新事業を育てるのは簡単ではない。ある企業のトップは「せんみつ」と表現した。「千挑戦して三つでもものになればいい、くらいのつもりでないと失敗を許容できず、社内が萎縮する」と挑み続ける。
実際、失敗も多く、どこも苦労している。既存事業との関連性が薄い「飛び地」や「知見がない」分野への投資で失敗が目立つ。
繊維と他の工業製品の異なる事業を組み合わせ、独自性を生もうとしているのがGSIクレオス。「この組み合わせは我が社ならでは。両事業の強さをうまく融合すれば、そこに他社にはない独自性が生まれる」(吉永直明社長)として、事業や分野の壁を越えた社内協業に力を入れる。
企業には個性がある。事業や得意分野は異なり、その組み合わせはある意味で無限だ。強みの組み合わせで独自の事業を生み出し、より個性的な企業が増えることに期待したい。