《めてみみ》名将の理由

2023/09/19 06:24 更新


 バスケットボール男子のFIBAワールドカップで日本代表がアジア1位となり、パリ五輪の出場権を獲得した。自力での五輪出場は48年ぶりの快挙。中国では処理水問題で高まった反日感情がバスケで一変したという話も聞くほど、国境を越えてバスケファンの心をつかんだ。

 ひときわ小柄ながらスピードとパスワークで存在感を放った河村勇輝、チーム唯一のNBA選手でコート内外をけん引した渡邊雄太、入り出せば止まらないシューターの富永啓生と、活躍した選手を挙げ出したらきりがないが、個人的に最も印象的だったのはトム・ホーバス監督だった。

 東京五輪で女子代表を銀メダルに導いた名将で、日本語での選手への容赦ない檄(げき)でも知られる。彼のコーチングの肝は、インタビューでたびたび口にした選手への信頼だ。「選手自身が考えている以上にその選手の可能性を信じる」ことがトム・ホーバス流。チームで決められたルールを遂行できなければ厳しく叱責(しっせき)するが、選手を「期待に応えないダメなやつ」「思ったほど使えない」などと責任転嫁することはない。

 チームスポーツに限らず、どんな組織も人が根幹にあるのは同じ。部下に対し、同僚に対し、あるいは自分自身に対して、優れたコーチとはどうあるべきか。つくづく考えさせられたワールドカップだった。



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