《めてみみ》「何を」よりも「どんな風」に

2023/10/03 06:24 更新


 創業から十数年のアパレル企業の社長に聞いた話だ。新規事業を始めるに当たって、大手や老舗ブランドで働いていた人材を採用した。実績も経験もある人を選んだつもりだったが、企業風土になじめなかったのか、結局数年もせずに辞めた。

 逆の話を別の企業で聞いたことがある。デジタル戦略を加速するため、同業他社でその分野の要職に就いていた人を招き入れたのだが、その部署の他のメンバーと仕事のやり方がかみ合わず、生え抜き社員の方が職場を去ってしまった。

 手薄な部門の補強、あるいは事業拡大のための即戦力を期待して企業は採用したのだし、入社する側も自分の能力を生かせるならと転職を決めた。なのに、互いのもくろみ通りにならないのはなぜだろう。

 新卒採用と並行して中途採用にも力を入れている企業の人事担当に人材を定着させ、活躍してもらうための採用基準を聞いたことがある。まず個人プレーではなく、チームで働く前提を共有できるか確認する。その代わり採用後、成果を出すまでの期限を区切らない。

 重要なのは前職の経験や実績を採用基準にしないこと。仕事の起点を自分で考えて作り、周囲をうまく巻き込むことができる人かを見極める。何の仕事をしているかではなく、どんな風に働いているかを基準にすると良い人材と出会う確率が上がるそうだ。



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