生育に合わせて美しく色を変える草花はいくつかある。綿花も代表的な一つ。開花直後はクリーム色に近いが、すぐに黄色になり、翌日からはピンク色へと変化していく。ピンクの色素の元はアントシアニン。紫外線を受けるにつれ、徐々に濃いピンク色に変わる仕組みだ。
一つの株のなかでも、個々の状態によって発育状況や色は多種多様。いち早くコットンボールになるような早熟な綿花も出てくる。植え付け時期や地方で差はあるが、ちょうど見頃の季節。少し離れて見ると、黄色や濃淡のあるピンク、そして真っ白い綿花が同時に咲き誇るようで、自然美の不思議を感じる。
今夏も猛暑が続いた。気象庁のデータによると、紫外線の量も年を追うごとに増加しており、地球温暖化の確かな進行を裏付ける。最終的な綿花の収穫はおおむね順調のようだが、酷暑と少雨の影響から、今年の生育過程は、やはり例年と違ったようだ。
気候の大変動に加え、国際紛争が激化するなど、困難な問題が一気に浮上してきた。「いずれ綿花は希少品になってしまう」。国産綿花の栽培に取り組む人たちからもこうした声が出始めた。温暖化対策も待ったなしの課題。色の変化を楽しむ間もなく、強烈な紫外線を受けて、全ての花が一気にピンクに変わってしまうようなことはないか。美しさの裏側で、少し不安も覚えた。