《めてみみ》時代の真ん中

2023/11/10 06:24 更新


 英国人デザイナーのフィービー・ファイロが、自身のECをオープンした。「セリーヌ」のアーティスティックディレクターを退任して5年半。絶えず復帰待望論はあった。今年に入ってからカムバックのうわさは強まっていたが、満を持しての再スタートだ。

 ウィメンズのデザインをしてきたが、そのマスキュリンな雰囲気が受けて一世を風靡(ふうび)した。そんなデザインのせいか、メンズを求める声もあり、一時期は本当にメンズラインを作るとの世評も高かった。復帰を待ちわびたファンが多かったのだろう。サイトがオープンすると瞬く間に多くの商品が完売した。開始の案内は、インスタグラムでメールアドレスを登録した人に送られた。

 どれほど名声を得たデザイナーでも、数年後のカムバックにがっかりすることはある。現場から長く離れた結果、時代の真ん中にいたクリエイションが、いつの間にか傍流へと追いやられてしまう。そんな風に感じることもあった。ファイロの場合はどうだろうか。

 かつてはトレンドをけん引していたクリエイションも、今は「シーズンレスで継続的なスタイル」だという。永続性を意識した、生産と需要のバランスあるビジネスを目指す。サプライチェーン上で無駄が出ないよう、素材を作りすぎないようにと考える。その考え方は、しっかりと今の時代を意識している。



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