偶然だが、先週取材した首都圏の三つのSC全てが今年度の売上高がコロナ禍前を超え、過去最高額を更新する見込みだ。東京大都市中心部と神奈川、埼玉の都市近郊施設で、立地環境とMDは異なるが、いずれも周辺で住宅の開発が続き、近隣の居住人口の増加が好業績の背景という点で共通する。
東京都心で大型複合施設の開発が一段と活発だ。11月は24日に森ビルが港区に麻布台ヒルズ、30日に東急不動産が渋谷駅前に渋谷サクラステージを開業した。2施設とも商業施設などのほか数万人が就業するオフィスゾーンに加え、高級分譲マンションを備える。来年以降も首都圏で都市近郊を含め、オフィス、住宅を備えた大型開発が相次ぐ。
東急の堀江正博社長は「日本は人口減少に転じたが、首都圏に人口が集中し、事業機会は大きい。渋谷にはオフィスビルが圧倒的に足りない」と開発に意欲を示す。
大型開発が生む新たな人流は街を活気づける。ただし、その一方で、繊維産地を含め、地方の多くが高齢化と人口減で停滞しているのが、日本全体を活性化する上で依然として大きな課題だ。
政府は半導体工場や再生可能エネルギー設備の開発などを地方経済活性化策の重点に据える。それ以外の方策で、商業ディベロッパーが地方活性化のために何ができるか。官民で知恵を絞り、実行してほしい。