中国日本商会が日系企業を対象に行った景気・事業環境アンケートによると、24年の中国事業の課題で「人件費上昇」の懸念が強まっている。昨年の調査でも人件費上昇が最も懸念する項目だったが、さらに焦眉の関心事になっている。
アパレル産業では人員確保が必要な縫製段階での人件費上昇は積年の課題で、価格維持のため東北地方や内陸部、国外生産移転が今も進んでいる。ここにきてデフレ懸念もある一方、中国全体で人件費が上昇する可能性があるため、対策として省人化に向けた最新機器やAI(人工知能)への投資を検討する企業も増えている。
とはいえ、人の問題は日系に限らずあらゆる企業に共通する。商品の特性・機能で大きな差が生み出せなくなった今、企業の成長・発展・差別化の基盤は、もはや「人」に絞られてきた。最新設備やシステムを適切に運用・応用するのは人であり、人の思いが企業風土を決める。今後ますます人の採用・育成・組織強化が最重要の経営課題になるだろう。
就職を迎える中国の若い人々の視点も変わりつつある。都市部の20代は社会が豊かに育ち、留学もして国際感覚を身に付けている。直面する社会課題を基点に、自己成長できる企業や生き方を選択することが増えていると聞く。国境を越えて共創できる企業になることが真の競争力につながる。