都内の有力百貨店を中心にインバウンド需要が好調だ。しかし、それはラグジュアリーブランドなど一部の領域に過ぎない。これまで運命共同体として長年にわたり取引してきた国内の専業メーカーが、危機意識を強めている。特に、百貨店の紳士服フロアでは単品平場が激減したためだ。
昔はネクタイ、シャツ、靴、かばん、財布などアイテムごとに売り場が成立していたが、今は縮小するばかり。平場が残っているフロアもあるが、品揃えの中身はもちろん、取引条件や販売手法は様変わりしてしまった。古き良き時代の百貨店を支えたライセンスブランドによるギフト需要も、消費意欲を刺激するほどの勢いはない。
一部の専業メーカーは、新たな卸先を求めて地方の個店の開拓に乗り出している。あるメーカーでは、専務自らが地方出張に赴くという。当地で有力個店に対してアポなしで飛び込み営業をかけ、成果を上げている。
今、百貨店の撤退や弱体化が進む地方都市では、地元の個店が優良顧客の受け皿になるケースが増えている。以前から、百貨店以上に人気の旬なブランドや高級品を揃える個店が地方のファッション消費を支えてきたことが改めて見直されている。だからと言って専業メーカーが新たな卸先を獲得するのは容易ではない。従来の成功体験を捨て去り、生まれ変わる覚悟が必要だろう。