蝶理のトップが約10年ぶりに交代する。6月の株主総会後、迫田竜之取締役常務執行役員が代表取締役社長に就任し、先濵一夫社長は特別顧問になる。先濵氏は10年を区切りに退任を決めていた。「私が1トップで経営させてもらって良かったから」と取締役も外れる。
先濵氏が社長に就いたのは15年1月。山﨑修二氏(故人)が病気を患い期中での社長交代だった。当時の経常利益は60億円。収益力強化に取り組み、目標の「経常利益100億円」を22年3月期に達成。その後、「経常利益100億円の常態化」を掲げ、前期は145億円まで伸ばした。
構造、組織改革と事業拡大のバランスが抜群だった。「構造改革と成長への投資はセット。リストラだけでは縮むだけ」と不採算事業から撤退する一方で、伸びる分野に人と資金を集中させた。
蝶理が財務基盤強化にこだわるのは過去何度も経営危機に直面したからだ。そのたびに銀行や東レをはじめとする取引先から援助を受け、産地企業などにも支えられ、今がある。「03年の新生計画から前だけを見て走ってきた。ただ今後の成長はそれだけでは難しい」と基幹システムを入れ替え、デジタル経営のための基盤を作りバトンを渡す。
社員に自信を与え、強い企業に変えてきた。「蝶理は変わった。企業は変わることができる」との言葉が印象に残る。