《めてみみ》人材確保の難しさ

2024/06/03 06:24 更新


 人手不足が深刻だ。飲食店に入ると、接客や調理が追い付いていない場面にしばしば出くわす。コロナ禍で雇用を絞った後、需要が戻っているにもかかわらず、人を補充できていないケースも多い。

 東京商工リサーチが4月に行ったアンケートでは、正社員不足を訴える声が回答企業4619社の約7割を占め、特に建設業や運輸業、宿泊業で目立つ。繊維ファッション業界でも製造から販売まで、あらゆる職種で人員がタイトな状況だ。

 ある産地企業の経営者は「誰かいい人がいれば紹介してください」が取材で会った時の決まり文句。会う人に同じように話しているそうで、人集めにかける必死さが伝わってくる。

 人手不足なら賃金を上げるのが王道。経済学では賃金も需給バランスで決まるとされ、実際、今年の春闘は大企業中心に大幅なベースアップが実施された。だが企業の支払い能力の差も大きく、中小企業だと簡単に上げられないのが悩ましい。

 政府は原燃料などのコスト増分だけでなく、賃上げ原資も価格交渉の材料になると訴えているが、下請け企業は「そんな交渉は今までしたことがない」と戸惑う。ましてBtoC(企業対消費者取引)企業は、消費者に「人件費を上げるので値上げします」とは言いづらい。やはりサプライチェーン全体で価値を上げ、人材を確保できる産業にすることが肝要か。



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