《めてみみ》時間は価値

2024/06/17 06:24 更新


 中学生の息子は欲しい物をインターネットで検索し、購入するのが当たり前の世代。好きな漫画があれば一気に集めてしまう。注文した翌日には商品が届く。タイムパフォーマンスを重視する息子には、そのスピード感が大きな魅力なのだろう。

 自分の場合、欲しい本があっても中古書店を巡り、見つけた時だけ購入する。探す時間も楽しみの一つなのだ。ECの便利さは理解しているつもりだが、積極的に利用する気にはなれない。特に洋服の購入は慎重になってしまう。

 取材を担当しているオーダースーツ業界では、スピード(=納期)が新たな価値を生み出す。ある専門店では、オプション料金で通常よりも半分の納期で届く「特急」が好評だ。中には、通常1カ月以上かかるオーダースーツの納期を7日間に短縮し、オケージョン需要など既製服の牙城(がじょう)を切り崩す専門店も出てきた。背景には、店頭での受発注から工場での生産、納品までのDX(デジタルトランスフォーメーション)の成果が大きい。ただ、物流を含めて人手不足の中、スピードの維持は今後の課題になるだろう。

 一方で、納期を急がない顧客に、割引サービスする専門店もある。ゆっくり作ることが価値につながるケースだ。早くても遅くても、時間は価値を生み出していく。どのようにビジネスに落とし込んでいるのかを考えるのも面白い。



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