メーカー機能を持つべきか、工場は持たず〝ファブレス〟に徹するべきか、商社が頭を悩ますテーマの一つだ。GSIクレオスが三菱ケミカルのトリアセテート繊維「ソアロン」事業の買収を決めた。ソアロンの原糸と生機を製造販売する三菱ケミカル富山事業所内のソアロン工場と、原糸加工の菱光サイジングを傘下に置く。同社は長年ソアロン使いの生地を米国などに輸出し、好調が続く。
トリアセテートは三菱ケミカルが世界で唯一作る。その製造機能を取り込み、製造から販売までを一貫で手掛ける。他にない強みを持つと同時に繊維事業の基盤強化と安定収益を目指す。
三菱商事は昨年、東洋紡と共同出資で東洋紡エムシーを設立した。日本ならではの物作りと商社の販売力を組み合わせ世界に売り込む。
帝人が松山事業所とタイのポリエステル製造会社を帝人フロンティアに移管したのが17年。苦労はしたがメーカーと商社機能の融合が実り、帝人グループ繊維・製品事業として100億円超の利益を上げるまでに成長した。
一方、伊藤忠商事は「利は川下にあり」と消費者に近い事業を強化し、他にない強みを発揮する。川上、川下のどちらに向かうかは戦略で分かれるが、いずれにせよ既存のビジネスモデルに限界を感じていることは確か。攻めることで新たな成長を手に入れようとしている。