商社はこの間、アパレル生産地の分散を進めてきた。コスト面に加え、コロナ禍以降はBCP(事業継続計画)の観点が背景にある。生産比率(数量ベース)はこの10年で中国が77%から56%に下がったが、ベトナムなど東南アジアは17%から34%に、バングラデシュは3%から約8%に高まった。
アパレルやSPA(製造小売業)が商社などを介さず海外工場と直接取引する〝直貿〟(直接貿易)も増えている。例えばアダストリアはサプライヤーリストを公表した。
企業にとってサプライチェーンの構築、強化は課題の一つであり、それを自ら管理、運営することはトレーサビリティー(履歴管理)確保の面でも重要だ。半面、直貿だと品質、納期管理や為替変動などのリスクは自ら負うことになるなど難しさもある。
強固で柔軟で最適なサプライチェーンを構築、維持するのは簡単ではない。ある商社では1000ある調達先の内の半分が「2、3年で入れ替わる」そうだ。
サプライチェーン構築の難しさから、アパレルやSPAが商社を使うべきかどうかをここで論じるつもりはない。ただ、コストメリットだけに目を奪われてはいけないはずだ。どのようなサプライチェーンが最適なのかを自ら判断し、何を自ら行い何を他社に任せるか。それらの総合的なバランス感覚が問われている。