《めてみみ》世界で評価されるメセナ

2024/10/02 06:24 更新


 初代ローマ皇帝アウグストゥスの側近の1人ガイウス・マエケナス。詩人などを手厚く保護したことで知られ、彼の名が転じて芸術や文化を支援する「メセナ」という言葉になった。最近はあまり聞かなくなったが、CSR(企業の社会的責任)活動の一環としてのメセナの持つ意義は今も変わらない。

 三宅一生氏らの熱望を受け、ワコール創業者の塚本幸一氏がバックアップして78年に設立したのが京都服飾文化研究財団(KCI)だ。西欧の貴重な服飾、文献、資料に加え、日本を代表するデザイナーたちの作品などを収集、保存。それを披露する展示会も続けている。

 そのワコールが業績低迷に苦しむ。コストの削減、ブランド再編やSCMなどの抜本的改革を進めている真っ最中。今夏、投資会社が筆頭株主になったことも話題を集め、ワコールが行ってきた様々なメセナ活動も弱まるのではという懸念の声も随所で聞かれる。

 ただ、巡回展をはじめKCIへの評価は海外で高い。ワコールの欧米事業への貢献も数字で測れないものがある。同社の京都における歴史の重さから見ても、後援は当面は揺るがないだろう。KCIは業界全体にとっても大きな財産だ。

 11月まで京都国立近代美術館を舞台に、5年に1度の大きな展示会を開催している。足を運ぶことがファッション文化に対する一人ひとりのメセナになる。



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