ウェブやSNS上であふれる情報に惑わされまいと意識しているものの、やはり気に掛かることは多い。この前も「世界で一番美しい本屋さん」を調べた。ロンドン、オランダのマーストリヒト、ポルトガルのポルトなど10以上の候補が出てくる。美しさという主観的な言葉だけに評価は様々になるのだろう。
その一つ、ポルトのレロ書店を訪れる機会があった。豪華な内装を誇る老舗の書店だ。『ハリーポッター』の著者J・K・ローリングがヒントにしたとのうわさも話題を呼び、愛読者の聖地にもなっている。予約制なのだが、店の前は100メートルを超える長蛇の列。残念ながら、入場は断念した。
コロナ禍の沈静化から世界各地に人が繰り出す。日本の主要な観光名所もインバウンドでいっぱい。オーバーツーリズム問題も深刻化し、各地で悲喜こもごもの出来事が起こっているのだろう。それでも、ある繊維産地の社長は「多少の問題が起こってもいいから、うちの町にも少しぐらい来てくれないかな」と語る。
数ある産地のなかでも、インバウンドの恩恵を受けているのは、今治のタオルや児島のジーンズぐらいか。裏を返せば、他の繊維産地には、まだ可能性がはあるということ。ニッチな分野でいい。あの産地のこのメーカーが作るこの商品だけは、世界で一番と胸を張れる日が来ると良いのだが。