日本の物作りが厳しさを増している。何人かのデザイナーによると、ここ数年で環境は大きく変わったという。10年前にできた生地を再度作ろうとすると「もうあれは作れない」と生地メーカーに断られる事例があったと聞いた。
生地だけでなく縫製も厳しい環境にある。後継者不足が解消されずに廃業する工場がある一方で、国内縫製の見直しの機運もあいまって生産ラインの争奪戦が起こっている。小ロットのデザイナーからの発注は後回しになることも多く、納期遅れへの懸念があると聞いた。こうした状況を前に、デザイナーは展示会時期の見直しや、工場の閑散期を狙った発注などの対応策を練る。
物作りの環境を守る取り組みは、ラグジュアリーブランドで先行している。ケリンググループでは、ボッテガ・ヴェネタが熟練の職人を育てる学校を開校したのに続き、ブリオーニもテーラーリング学校を開いた。シャネルが職人の技を守るため、花と羽根細工のルマリエや刺繍とツイードのルサージュといった企業を支援してきたのは有名な話。職人技の継承に取り組むLVMHメティエダールは、デニムのクロキや西陣織の細尾とパートナーシップを結んでいる。
日本が持つ高い物作りの技術をなんとか継承しなければならない。そのために何ができるのか。企業の枠を超えた取り組みが求められている。