「24時間戦えますか」。80年代の終わりに、栄養ドリンク剤のCMでそんなフレーズがはやった。中学生だった記者は「社会人になるとそんなに働かなければならないのか」とびっくりしたことを覚えている。
その後、過労死が社会問題化し、労働基準法などを守らずに従業員を働かせる会社が「ブラック企業」と言われるようになった。今はコンプライアンス(法令順守)を意識し、社員の健康とワーク・ライフ・バランスに気を配ることが経営者に求められている。
先日、あるアウトドアメーカーの社長から「僕は休日のスケジュールから埋まっていく」と教えてもらった。ヨットにフライフィッシング、トレッキングやスキーと年中アウトドアを楽しんでおり、フィールドに行ったついでに近くにある自店まで足を伸ばし、視察するそうだ。その社長は「本業に生きるから」と、自社の社員にも〝外遊び〟を積極的に推奨していた。実際、同社の業績は良い。
三十数年前と比べると隔世の感があるが、全ての企業が「休日を楽しもう」と呼び掛けているわけではないのも事実だ。仕事に生きる休み方というのは、オンとオフの境目があいまいになり「実際は長時間労働になっているのでは」との指摘もある。ただ、トップが「もっと遊べ」と公言するのは、人間らしい働き方を広げるための第一歩だと思う。