12月前半は、ラグジュアリーブランドのクリエイティブディレクターの交代発表が相次いだ。驚かされたのは、マチュー・ブレイジーの「シャネル」抜擢(ばってき)だ。「ボッテガ・ヴェネタ」退任発表の1時間後のことだった。
6月のヴィルジニー・ヴィアール退任以降、シャネルの次期ディレクター候補には、何度もうわさになったエディ・スリマンや、ピエールパオロ・ピッチョーリらの名前も挙がったが、予想外の人事となった。
思えば、9月にミラノで披露したマチューによるボッテガの新作は、遊び心あふれる良いコレクションだった。ブランドが大切にする手仕事の技とともに、物を作る喜びが伝わり、老舗ブランドの表現に新たな風を吹き込んだ。クラシックなスタイルをモダンに変えていく力のあるデザイナーだけに、抜擢にはひざを打つ思いだった。
ちなみに、ボッテガの次期ディレクターには、23年から「カルヴェン」を率いてきたルイーズ・トロッターが就任する。ボッテガとの相性も良さそうだが、玉突き人事の結果、カルヴェンはディレクター不在に。ようやく動き出したブランドだっただけに、惜しい気持ちも否めない。
複数のブランドが関与した交代劇。その中心となった新生シャネルは、25年10月にパリで最初のショーを行う予定だ。モード界にどのような刺激をもたらすか、期待は大きい。