《めてみみ》なくてはならない存在

2025/03/28 06:24 更新


 昨年秋からこの春先まで、パリのガリエラ美術館で「スティーブン・ジョーンズ、帽子職人」展が開かれていた。80年代という最初期から最近のコレクションまでを展示。英国出身で、現代の最も優れた帽子職人の一人として認められている彼の作品を幅広く紹介していた。

 彼は長年にわたるキャリアの中で、多くのブランドやデザイナーとともに仕事をしている。ジョン・ガリアーノの「ディオール」や「マーク・ジェイコブス」、「コムデギャルソン」のヘッドピースは鮮明に記憶に残っている。「ヴィヴィアン・ウエストウッド」のためにデザインした「ハリスツイード」の王冠の帽子は特に有名だ。

 優れた職人はデザイナーブランドにとって、なくてはならない存在だ。例えば、シューズブランド「キッズ・ラブ・ゲイト」を手掛ける山本真太郎さんは25年秋冬、「コムデギャルソン・オムプリュス」や「キディル」「ダブレット」のために靴を作った。パリ在住の帽子デザイナーの日爪ノブキさんもまた、キディルとコムデギャルソンのためにヘッドピースを作った。

 一つのコレクションを作るのには、たくさんの職人の協力がある。職人がもつ専門知識や手仕事の技が、デザイナーの発想を具現化する土台となる。有名無名を問わず、それぞれの物作りに懸ける職人に敬意を表したい。



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