南極大陸観測基地の料理人のことを思い出した。20年は前のテレビ番組だったと思う。調理で残った野菜くずなどの食材を活用し、朝昼晩、全く違う料理を生み出していた。限られた食材を無駄なく使い切る。かつ隊員が飽きないようなメニューを生み出す企画力や手際の良さ。なんと素晴らしいことか。
その感動を思い出したのは、繊維・ファッション業界の廃棄衣料削減の取り組みが多様に広がっているためだ。10月、それぞれに再資源化の開発・実践を進めている繊維素材メーカー5社が、新たなアライアンス組織を立ち上げた。繊維to繊維リサイクルを目指し、困難だった複合素材の選別の自動化や分離技術の確立、再資源化などに取り組む。
11月下旬には、大阪で行政と小売りや商業施設、繊維素材メーカー、リサイクル業などの民間企業が連携し、回収から選別、リユース、リサイクルの循環を目指す地域共創型の協議会が発足した。業種の垣根を越えた取り組みで、使用済み衣料の焼却・埋め立てを減らす。
自社・他社製品を問わずに回収する企業はずいぶんと増えた。自社製品の買い取り、再販に取り組む動きも広がる気配がある。供給側のこうした動きが広がることで、生活者の意識も変わっていくだろう。「無駄なく使い切る」。完成はまだ先かもしれないが、確実に前進していると思いたい。
