バナナやキウイフルーツの熟成を早めるには、リンゴを同じ袋に入れておくのが有効とされている。リンゴが出すエチレンガスの働きによるもので、エチレンが植物の生長を加速させるスイッチとして作用する。植物が虫に襲われた際にもエチレンを放出しており、植物同士が種を超えてコミュニケーションをするのにも使われているとの説が有力だ。
エチレンは、人間社会にとっても欠かせない。原油由来のナフサを分解すると出来る基礎化学品の一つで、レジ袋などに使われるポリエチレンや、塩化ビニル、アクリル繊維、ポリエステルなど幅広い化学品の原料になる。中東情勢の悪化による原油調達難で国内のエチレンプラントは軒並み減産を決め、価格も高騰し始めている。合繊メーカー各社は当面の原料は確保しているものの、長引けば生産に影響が出かねないと事態の長期化を懸念する。
コロナ下、世界的にコンテナ物流が停滞した際にも言えたことだが、普段、何事もなくうまく回っているように思える世界が、実はもろい土台の上に成り立っていることを改めて感じさせる。
いま、紛争で異変を感じた植物たちが盛んにエチレンガスを放っているかもしれないが、かすかに甘いその匂いに人は気づくだろうか。世界が力を合わせて解決すべき課題は依然として山積みだ。争っている場合ではないと思うが。
