【鉱物系機能素材って何?④】イフミック 温泉水の効果に着目

2020/06/14 06:25 更新


 「イフミック」はテイコク製薬社(大阪市、畠山兼一郎社長)が特定の温泉水などを組み合わせて作ったナノレベルの機能素材だ。イフミックを加工した繊維製の生地を身に着けると、「疲労回復やバランス感覚の改善といった現象が見られる」という。アパレル、雑貨分野はサンラリーグループのサンフォード(岐阜市)が〝ハイパフォーマンスギア〟の「アクセフ」として商品化している。トップアスリートの使用実績をSNSで訴求し、認知が広がってきた。

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温泉水や湧き水採取

 イフミックの開発は、テイコク製薬社が温泉水の体への効果に着目したことがきっかけだった。日本各地の温泉水や、鉱物を豊富に含んだ湧き水を採取して回り、それらに含まれる成分による人体への影響について研究を重ねてきた。

 17年、ある特定の組み合わせで作った溶出液の中にナノレベルの微小な結晶体があることを発見した。その溶出液を含浸させた素材は、皮膚に直接触れなくても「皮膚の表面温度が上昇し、血流の増加、体幹の強化、歩行が安定することがわかった」という。同社はナノレベルの結晶体を「インテグレーテッド・ファンクショナル・ミネラル・クリスタル」と呼び、頭文字を取ってイフミックと名付けた。

 共同研究している東京都市大学工学部医用工学科の平田孝道教授も「血行促進、平衡感覚の改善、鎮痛効果が見られる」と評価した。ただし、「なぜそうなるのか、メカニズムを解明できていない」段階だった。「鉱物、水、温泉水の組み合わせによって効能の変化や、効能が複数発現する」ため、目的に応じた配合の解明も課題となった。同大学は18年春、総合研究所に「ミネラル結晶体研究センター」を新設。平田教授がセンター長に就任し、産学連携でイフミックのエビデンス(根拠)を示すための研究体制が整った。

サンフォードが製造販売する「アクセフ」

一酸化窒素が関与

 研究センターの開設後、「イフミックによって体内で発生した一酸化窒素(NO)が関与していることがわかった」という。NOが体内で様々な機能を活性化させることは、ルイス・J・イグナロ博士が発見し、98年にはノーベル医学・生理学賞を受賞している。こうした研究を踏まえ、19年夏には1年の研究成果として、イフミックを加工した素材を身に着けると「体内でNOが生成され、血流促進や平衡感覚が改善することを証明した」と発表。特許(第6557442号)も取得した。NOの生成メカニズムは引き続き研究しているという。

 体への効果は見えにくく、個人差もある。第三者の研究機関による成果が示されたことは、イフミックの事業化を後押しする要因となった。サンフォードのアクセフは好調に推移し、前期(19年12月期)の売上高は2億5000万円(小売り・卸価格の合算)。プロ野球界とつながりの深いGSL(埼玉県狭山市)の協力を得て、野球選手向けの販促を強めているほか、陸上競技、格闘家にもユーザーを広げている。口コミの影響とともに、アクセフのアクセサリーを使用していることがSNS上で拡散され、販促に結び付いている。

 今期からリラクシングウェアを充実し、「リカバリーなどをうたう〝健康アパレル〟として打ち出す」(吉田國廣サンフォード社長)という。ゆったりしたサイズ感のメンズ、レディスのTシャツやパンツ、アイマスク、ネックウォーマー、ブランケットなどアパレル、雑貨を揃える。今期は5億円の売り上げを目指している。

プロ野球選手などアスリートが使用する「アクセフ」のアクセサリー類
(繊研新聞本紙20年4月23日付)


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