柏木です。
前々回書いた、ジーンズの耳(セルビッジ)の話の続きです。
デニムの反物の生地端のほつれ留めの部分なんですが、この部分の経年変化がジーンズ特有の魅力だと書きました。
そこで、今回はリーバイスXXのセールス&マーケティングディレクター、大坪洋介さん(写真下)に話を聞きました。
リーバイスXXは歴代のリーバイス製品の復刻商品や新ライン「メード&クラフテッド」を全世界に販売するプロジェクトで、大坪さんは日本を含め、アジア・太平洋地区の市場を担当しておられます。
大坪さんによると、「デニムがすばらしいのは、はいて、洗ってを繰り返すうちに、自分の体に馴染んでいくこと。縮んで、伸びて、色落ちして、もとの形が年月とともに変化していく。もちろん着ているうちにくたびれていくんですけど、ジーンズの場合、他の服と違って、そのプロセスが楽しい」。
で、特にそれが経年変化を味わえるのがデニムの中でもボトム、つまりジーパンだそうで、「座ったり、立ったり、しゃがみこんだり、その動作に関わる部分にシワが入ったり、色落ちして、それが表情になっていく。とりわけ、耳の部分は経年変化がよく現れる部分ですね」。
長くアメリカで暮らしてお仕事をなさっていた大坪さんは、良い表情のジーンズをたくさん持っておられるのですが、これは、そのうちの1本。60年代の501で、前面に当時の持ち主が施したらしい刺繍が入っています。
耳の部分はこんな感じ。刺しゅうのカタツムリが耳をにらんでいます。
耳が裏にある部分が着用→洗濯→乾燥のサイクルを経て、ジーンズの表部分に凸凹が浮かぶのをアタリというのですが、それがよく出ています。
アタリがこんな風に出るのは、大坪さんの説明によると、
①耳の付いた生地端を折り返して縫うので、生地が重なっていない他の部分と比べ、着用時の擦れが増えるから
②洗って乾かしたときの縮み、パッカリングが発生するから
③良くも悪くも、古着のジーンズなどに使われるデニム生地は、現在より太さが均質ではない糸を使って織られているので 、洗濯、乾燥のプロセスの中で、ランダムな縮みが起こるから、だそうです。
最近はジーンズに関して、こんな風にディテールにこだわりすぎるのは、あんまりお洒落ではない、という向きもあるみたいです。今は、安いのから高級ブランドまで、いろんなジーンズが選べますしね。ただ、買ったばっかりのときは格好いいのに、着込むにつれ、汚く劣化していくジーンズも最近は多いような気がします。
個人的には老若を問わず、古着でも、復刻でも、どっかのブランドのモノでも、いい感じに色落ちした、表情のあるジーンズをはいてる人って、その時々の流行に関わらず、格好いいなあと思います。
そういう人のジーンズって、シルエットや値段がどうあれ、決まって耳の部分のアタリを含め、経年変化が上手い具合に味わいになっている場合が多いように思うのです。
というわけで、次回も、デニムについてもう少し。
ではまた。
かしわぎ・まさゆき 20余年にわたり、川上から川下まで取材をしてきた記者が1億コ(自己申告)のネタから選りすぐりを披露します。編集部記者。92年入社、大阪支社で商社など川上分野とアジアを長年取材。02年に東京本社転勤、現在、セレクトショップや外資系チェーン店などを担当。統計資料なども司るデータ番長