――まるで手元で組み立てているような臨場感とリアリティー。スマートフォンアプリ企画・開発のファンアップ(東京)は、アクセサリーをスマホ上でデザインし、投稿・販売できる物づくりマーケット「モノミー」を本格リリースした。ユーザーは、スマホという仮想空間にデザイン画像を投稿し、購入者が発生した時点で初めて生産工程に入る。パーツメーカー、組み立て工場、ユーザー、そしてアプリ運営の各立場で、在庫リスクのない物づくりのあり方として注目される。
モノミーが掲げるのは、「ハンドメイド」(手作り)ならぬ「スマホメイド」(スマホで物づくり)マーケット。スマホアプリで、個人作家が参加するハンドメイドマーケットとして、「ミンネ」「クリーマ」などがあるが、モノミーは、デザイン工程からスマホ上でできる。スワロフスキー、天然石、チャーム、ゴールドフィルド(金張り)、10金など約3000種のパーツから、ユーザーは好きな材料を選び、画面上で操り、組み立てる。操作は直感的かつ、パーツの動きもリアリティーがある。これは、ゲームエンジンで使われる物理演算を用いて担保した。出来上がったデザインは、各ユーザーのブランドとして公開。購入者がつくと、ファンアップの自社工房で手作りし、梱包、配送、決済、アフターケアまで同社が担う。
ポイントは、参加者それぞれにとって“ノンリスク”であること。モノミーとして、パーツ在庫は持たず、工場や卸店からリースして撮影し、画像としてバリエーションを揃えている。パーツ業者としても、大きなリスクなくオンライン販売に参入できるとして、現在42社が参加している。現在、投稿作品の価格帯は、1500~6000円。ユーザーは作品の売り上げの10%がポイント還元され、今回の機能追加により、現金受け取りも可能になった。「従来の作って買えるマーケットから、作って売れるマーケットにアップデートできた。IT×物づくりで、製造に革新をもたらしたい」と山口絵里社長。
15年8月にプレリリースし、累計投稿数は13万個で、うち販売数は1000個。1週間で平均20投稿と熱心なユーザーを掴んでおり、アクティブ率の高さが強み。現在、多数のインフルエンサーを抱えるコーディネートアプリとの提携を進めているほか、販路拡大を狙った他のマーケットプレイスとの連携や、企業とユーザーのデザイン協業など予定。現状、自社工房の生産能力は1日100個だが、注文が1000個レベルになれば外注し、商品価格が下がる仕組みも導入する考え。「作るマーケットアプリなので、売るのは他社サービスを通じてでもいい」という差別化のもと、当面は10万ユーザー獲得をめざす。