欧州、日本のオーダー市場に手応え

2015/09/28 08:08 更新


カスタム、上質志向つかむ

 欧州のテキスタイルを使ったメンズのオーダーメードスーツ商戦が16年秋冬、一層過熱しそうだ。伊素材見本市のミラノウニカで毛織物企業が集積するエリア「イデア・ビエラ」は、日本人バイヤーの熱気に包まれた。圧倒的なブランド力を持つ欧州有力テキスタイルメーカーの商品で、高まるカスタマイズ需要をとらえようとする機運が高まっている。(橋口侑佳)

高くても需要旺盛

 イデアビエラに出展した毛織物企業の日本担当が口を揃えて好調を指摘するのが、オーダースーツ向けの販売だ。

 日本からの来場者の対応に「例年にない忙しさ」というのはエルメネジルド・ゼニア。特に好調なのがオーダースーツ向けで、テーラー、百貨店アパレルのバイヤーがひっきりなしに商談に訪れた。「問屋関係では久しぶりに来るバイヤーもいて、市場の広がりも感じた」と話す。

 ロロ・ピアーナは「セットアップスーツの人気が回帰し、どうせなら自分だけの1着を作りたいという需要が世界的に増えている」と強調する。日本市場もオーダースーツ向けの売り上げが拡大しており、今後の伸びしろも見込んでいる。

 円安・ユーロ高に加え、原料が高騰し、欧州テキスタイルは決して買いやすい環境ではないが、「せっかくお金を使うなら良いものを買いたい消費志向」(チェルッティ)が活発な商談を後押ししている。

「ムリネ」に注目

 16年秋冬のメンズスーツやジャケット地は、質感がマットに向かい、色や凹凸による豊かな表面感が重視されている。注目は、ムリネ。ムリネはイタリア語で杢糸のこと。異なる色糸を撚り合わせた糸で織ることで、柄の輪郭をあいまいにしたり、色のミックス感で表情に深みを出す。

 ブークレ糸も凹凸の表現や柄に動きを出すのに多用されている。柄はチェックが多く見られた。ゼニアは、グレーにブルーや赤を差すなど色彩豊かなチェック柄を揃えた。ムリネや起毛で柄をぼかすことで、コントラストを抑えられ、派手過ぎない。

チェック柄もムリネを使うことで派手すぎない(エルメネジルド・ゼニア)
チェック柄もムリネを使うことで派手すぎない(エルメネジルド・ゼニア)

 ロロ・ピアーナはアルパカコレクションのバリエーションを広げた。ブークレ糸で凹凸のある生地はスーリーアルパカを使用し、量感に反して軽い。

ブークレ糸で、もやもやとした表情と凹凸。スーリーアルパカで軽く(ロロ・ピアーナ)

 チェルッティは、ムリネを多く取り入れ、ブラウンベースにブルーやグリーンのラインを走らせたチェック柄や、ボルドーに白と黒のミックスなど表面に動きのある素材を充実した。

ムリネで表面感豊かに(チェルッティ)
ムリネで表面感豊かに(チェルッティ)

 ドーメルは光沢がブランドの特徴の一つだったが、ビジネスウエア向けにマットな生地を揃える「クロノ」を仕掛ける。「ダブルスーツや3ピースをかちっとかっこよく着こなすスタイルが回帰している」とし、英国で生産する同社にとって追い風とみる。ヴァルベリス・カノニコは、スーツ向けフラノの目付けが平均250㌘だったが、360㌘やや重厚感のある英国調を意識した生地を増やした。

(写真=マルコ・ベルトリ)



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