《私のビジネス日記帳》たかが20年、されど20年 文化ファッション大学院大学学長 櫛下町伸一

2026/07/01 06:25 更新NEW!


 学長拝命の知らせは、ファッショントレンドの移り変わりのように突然やってきました。22年10月末に恩師である濱田勝宏前学長が急逝され、副学長だった私が遺志を継ぎ、重いバトンを託されたのは、人々が冬のコートに身を包み始めた同年12月のことです。そのずっしりとした重みを受け止めた時、ふと脳裏をよぎったのは、本大学院が日本初の試みとして門戸を開いたあの日の記憶でした。

 文化ファッション大学院大学(BFGU)は、日本初のファッションビジネス専門職大学院として06年に開学。今年度で20周年を迎えます。開学の目的は「国際的に通用するファッション価値の創造と、グローバル視点を持つ人材の育成」にあります。しかし開学当初の舞台裏は、華やかな世界とはほど遠いものでした。

 文字通り「走りながら考える」目まぐるしい日々の連続。定員に満たず、ふたを開ければ「学生総数を講師陣の数が上回る」という前代未聞の状況だったのです。いま振り返ればこれほどぜいたくな環境はないでしょう。

 第一線で活躍する名だたる講師陣が少数の学生に懇切丁寧に向き合うのですから、経営的視点で見れば圧倒的に「コスパの低い」学校でした。ですが、この採算度外視の濃厚な時間が、高度専門職業人を輩出するという私たちの使命を揺るぎないものに育ててくれたのです。効率では測れない泥くさくも愛おしい原点。それがBFGUの始まりでした。

(文化ファッション大学院大学学長、文化出版局局長 櫛下町伸一)

 「私のビジネス日記帳」はファッションビジネス業界を代表する経営者・著名人に執筆いただいているコラムです。

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