12回にわたって連載中の、架空の百貨店インショップ「ルクリア」の店長、麻紀の成長の物語。副店長の美穂、先輩でスーパーバイザーの瞳、百貨店フロアマネジャーの大谷さんが登場します。
前回、売り上げにしっかり繋がるPOP(店頭広告)の書き方を学んだ麻紀。今日は、店頭のディスプレーに立ち返り、お客を呼び込む売り場を作ります。
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今日は閉店後に売り場変えの作業がある。明日からの2週間、ルクリアのフロアのテーマが「ゴールデンウイークのトラベル」に変わるからだ。ルクリアではさらに、「軽量で持ち運びの際にかさばらず、あたたかい」という機能性に注目して、薄手の羽織り物を見せようと考えていた。当初はストレッチのきいた細身のパンツや、動きやすいショートパンツを打ち出そうかとも思ったが、アイテムが豊富な羽織り物に決定した。日中は半袖で快適に過ごせても、朝晩はまだ長袖が欲しくなる気候だからである。
副店長の美穂が、店長の麻紀に聞く。
「麻紀さん、明日から『トラベル』というテーマで、羽織り物を見せることにしましたよね。当てはまる商品がたくさんありますけど、どれをボディーに着せましょうか?」
春のルクリアには、羽織るアイテムが豊富に揃っている。薄手のブルゾン。風を通さず保温性が高いライダースジャケット。形状記憶加工で、たたんでバッグに入れてもしわになりにくいジャケット。UV(紫外線)カット機能のついているカーディガンなどだ。
「そうね。テーマに該当する商品が結構多いよね。今回は、ボディーに着せて見せるだけではなくて、前面に集めてみようか」
「前面に集める…ですか?」
麻紀はスーパーバイザーの瞳から教えてもらったことがあった。テーマに該当する商品を見てもらうために有効な手段が二つある。一つは、あらゆるディスプレーで見せるという方法。これはいたる所で目に入るので、お客様に伝わりやすくなる。そしてもう一つが、テーマに該当する商品が豊富な場合、前面の什器に集め、一堂に展開するという方法だ。こうすることで、テーマを強く印象付けることができる。店の前を通る多くの人にアピールできるので、興味をもってくれた人を店内に引き込む効果があるのだ。
「へ~え、勉強になりました! ボディーに着せる以外にも、伝え方があるんですね」
「そうなの。そしてPOP(店頭広告)で『旅行に最適な、持ち運びしやすい羽織り物がここにあります』っていう情報を発信すれば、完璧じゃないかな」
「なるほど!お客様がどんな反応をされるか楽しみですね」
テーマは「①トラベル②羽織り物③持ち運びしやすい」であり、これらのテーマの切り口は「①オケージョン②アイテム③機能」ということだ。テーマを伝えるためには、ボディーに着せるだけでなく、前面の什器で一堂に展開して売り上げを伸ばすこともできる。
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※この物語はフィクションです。実際のショップ、人物とは一切関係ありません。
(繊研新聞2013年の販売・リテイリスト支援のぺージに掲載されたものを元に編集しています)