有力セレクトショップは22年春夏、新規ブランドが充実する。実力派の若手デザイナーによるデビューコレクションや1アイテムに特化したブランドに加え、特に急増しているのはサステイナブル(持続可能)なブランド。素材から生産過程、物作りに携わる人の労働環境まで、きっちりと意識を向けたブランドが増えている。
(青木規子、須田渉美)
「カナコサカイ」は、ロン・ハーマンなどいくつかのショップがイチ押しする注目の若手だ。日本の産地と取り組んだオリジナルのテキスタイルを使った物作りが特徴。ブランドを通じて日本で作る付加価値を世界に伝える。超長綿の強撚糸を使ったボイルのジャケット、体のラインをきれいに見せるローゲージのニットドレスなど、ファーストシーズンながら変化のあるコレクションとなった。
多様性に重きを置くニューヨークで服作りを学んだこともあり、性差を意識することなく、「その人らしさを引き出す」クリエイションに取り組む。22年春夏はメキシコのアート財団カーサワビの空間から着想を得て、アート要素を反映した。鮮やかなタイダイのセットアップは、女性の若い職人に、日本の陶芸の器の色を再現してもらったコットン・ナイロンの生地を使っている。
デザイナーは日本の大学を卒業後、ニューヨークのパーソンズでファッションデザインを学び、「プロエンザ・スクーラー」などで研修した後、帰国。ドメスティックブランドのデザインチームに2年間所属してから独立した。
ロン・ハーマンが新規導入する「マリア・マクマナス」も注目だ。21年春夏、本格始動したニューヨーク在住アイルランド生まれのデザイナー、マリア・マクマナスが手掛ける。女性が何度も大切に着られるように、エレガントで着心地の良い服作りを目指しており、ワードローブの必需品であるドレスやTシャツ、セーター、パンツをさりげなくシックに仕上げている。
デザイナーは、マーチャンダイザーとして多くのブランドに携わってきたキャリアを持ち、時代を読む鋭い観察眼や洗練された美意識に定評がある。ニューヨークのショールーム、ザ・ニュースの石井ステラ氏との対話からパートナーシップが生まれ、ブランドが誕生した。サステイナブルな物作りを徹底しており、生分解性繊維やリサイクル繊維を使い、生産過程に携わる人々の労働環境や人権問題にも意識を向ける。