23年度入社の新入社員が、希望と少しの不安を胸に社会人の道を歩み始めて半年ほどが経った。ファッション業界で輝く先輩たちの背中を追いながら、日々、店頭や本部で汗を流している。入社から半年ほど経った今、新入社員に話を聞いた。
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「目の前の客を幸せに」が原動力 誠意ある接客は人間力から
販売職で入社し、バロックジャパンリミテッドの「マウジー」ららぽーと横浜店でサブを務める森田直美さん。「目の前のお客様を幸せにしたい」と笑顔で話す。大学3年生の時、子供の頃から通っていたマウジーでアルバイトとして働き始めたのが、キャリアの原点。モデルで同社の人気販売員だった花山瑞貴さんに憧れ、勤務先はルミネエスト店を選んだ。
強みを伸ばせる場所
就職活動では、同社のみを受けた。アルバイト時代に「プロフェッショナルな先輩たちと働くなか、自分の個性や強みを伸ばせる場所はここだ」と確信していたからだ。もともと「お客様と話すのが好き」な性格だったため、総合職ではなく販売職を志望した。
同社の魅力は、こだわりぬいた一つひとつの商品や店の雰囲気に加え、「あたたかな接客」と強調する。学生時代、手に届かない価格のジーンズなどもあったが、店に行くと商品を買ってもらうことよりも、来店した感謝を伝えられる経験を何度もした。その感動が今でも心に残っているという。
学生時代に経験した接客は森田さんの仕事の信念になった。「売り上げ以上に、目の前のお客様を幸せにし、また来たいなと思えるような空間を作る」。研修でも、一人ひとりの客を大切にする心を鍛えられた。
正社員として入社し、今まで以上に責任感が強くなったという。サブは店長と同じ気持ちで店を守る存在。「私の背中を見て、ついてくる仲間がいる」。これまではチームの一人という認識だったが、先頭でチームを引っ張っていく立場になり、社員としての使命感が生まれた。
アルバイト時代に学んだチーム力が今に生きる。「みんなが一丸となり、目標に向かって挑戦していく先輩たちの姿を見て育ってきた」。その精神は、中高生の時に打ち込んだダンスの経験にも通じ、「チームワークの大切さを実践する」企業の姿勢にも共感する。
日々の業務のローテーションを組む際は、仲間が孤独を感じないように配慮する。店頭では接客と裏方での事務作業とを分担するが、販売員の配置にはじまり、それぞれの表情にも気を配る。「ありがとう」など声掛けも意識する。
毎日の朝礼と終礼も丁寧にする。朝礼では、一日やり切ったと仕事終わりに思える小さな目標を設定してあげる。終礼では、一日を振り返り、良かった点と、反省点と改善策を話し合い、メールで自店のすべての販売員にも共有する。
人間力も増した。自身の強みでもあり、日頃から気を付けているのは印象力という。客にも一緒に働く仲間にも誠意ある対応を徹底し、笑顔を忘れない。「私の話を聞いて、どう捉えるか」と相手の立場で言葉遣いも考える。後輩の手本になるように初心に帰り、接客以外にも、商品のたたみ方や掃除などもしてみせる。
憧れられる存在に
「SNSの時代、販売員の存在価値が揺らいでいるけれど、お客様一人ひとりを考えた接客は販売員だからこそできる。それがバロックの良さ」と考える。学生時代のアルバイトは、コロナ禍の真っただ中だった。客足が遠のくなか、「来店してくださったお客様には感謝の気持ちを持って接しよう」と、真心を込めた接客を徹底した。すると、オンラインでしか買い物をしたことがないという客が「お姉さんの接客で楽しい気分になった」と言ってくれた。そうした経験を通じて実感した「新しい買い方、着方を提案できる」喜びは、今でも原動力になっている。
憧れられ続ける女性になるのが理想。目指すのはブランドの顔である「オフィシャルスタッフ」だ。「ブランドの魅力を自分の力で伝えたい」。今まで手本にしてきたオフィシャルスタッフたちは、SNS上でも実店舗でも輝いているというが、内面が美しいからこそと考える。
オフィシャルスタッフとして活躍する販売員は「唯一無二の方が多い。お客様からの信頼や発信力は努力の結晶」。森田さんも影響力を与えられる存在になるため、日々の接客や毎日のSNSの投稿に余念がない。
(繊研新聞本紙23年10月23日付)