【パリ=松井孝予通信員】ファストファッションの「シーイン」が、人権や環境への対応不足で国際機関から勧告を受けた。OECD(経済協力開発機構)のフランス国別連絡窓口(PCN)は、労働環境や環境配慮の点で多国籍企業行動指針を順守していないとし、改善を求めた。
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報告書は、フランスのAGEC法で義務付けられるリサイクル素材比率や生産国表示を守らず、国際労働機関(ILO)が定める労働者の権利保護にも積極的に取り組んでいないと指摘。
中国法を盾に国際基準を回避する姿勢は、労組結成権の阻害や劣悪労働、強制労働のリスクにつながると警告した。また、工場監査やサプライチェーン情報、社会・環境影響の公開がなく、透明性も欠いていると懸念を示した。
OECDの勧告は法的拘束力を持たないが、EU(欧州連合)では27年から企業持続可能性デューデリジェンス指令(CSDDD)が段階的に施行される予定で、環境や人権配慮を義務付ける流れが強まっている。今回の勧告はその先駆けとして、企業責任を改めて問う内容となった。
シーインは「持続可能性方針を整備した」と反論しつつ、未施行のEU法への違反指摘は時期尚早で誤解を招くと主張する。
しかし、欧州議員らは「構造的に持続不可能なモデル」として批判を強めており、今後の規制の動向は同社の事業継続に直結しかねない。