【センケンコミュニティー】わが社のユニーク空間
普段私たちが働くオフィス空間。そこにはその会社の個性や考え方が表れているといっても過言ではありません。IT企業のテーマパークみたいなオフィスなどがマスコミで取り上げられることもありますが、わがファッション業界も空間へのこだわりは負けていません。クリエーティブな仕事をするためには、空間も重要な要素のひとつと言えるでしょう。思わず行ってみたくなるような個性的なオフィスや、社内のおもしろスペースをご紹介!
■ウェルネスデザインの思想を体感 /マッシュホールディングス
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■チュチュアンナ 「一期一会」の心学ぶ茶室
靴下・インナーSPA(製造小売業)のチュチュアンナは今年5月、大阪市中央区森ノ宮に新本社ビルを開設した。靴下型のビルの外観を含め、上田利昭社長自らプロデュースしたもので、5階フロアに設けたのが京間8畳の茶室である。
茶道を通じて、社会人としてのマナーや礼節、礼儀作法を習得するほか、同社のコア事業である店舗における人と人との出会いを大事にする「一期一会」や「おもてなし」の精神を学んでいくのが大きな狙いだ。
表千家の先生を招き、毎回1チーム約10人の社員が1時間余りの〝授業〟を受ける。勤務時間中のため、メンバーは多少入れ替わるが、チームは全部で20組近く。平均すれば社員1人当たり年3回程度の参加となる。男女、役職に関係ないチーム構成で、社内のコミュニケーション促進にも役立っている。
障子を開ければ小さな坪庭があり、植栽が四季の変化を教えてくれる。授業も四季折々に合わせた器やお菓子を変えながら行われることが多い。「靴の置き方から始まり、畳に座る時の作法など意外に難しい。茶道の奥深さに驚かされた。それでも1時間余り仕事を忘れて楽しめる」と広報・PR担当の木村亜由美さん。今は本社スタッフ中心の参加だが、店舗展開がグローバルに進むなか、今後は海外の社員の研修や来賓などでも日本文化を経験してもらう良い場になりそうだ。
写真=坪庭から四季折々の変化もわかる
■マッシュホールディングス 随所に「ウェルネスデザイン」の思想
マッシュホールディングスが11月に移転した東京・麹町の新オフィスビルには、企業理念に新たに加えた「ウェルネスデザイン」の考え方が反映されている。ファッション、ビューティー、スポーツ、フードなど、多彩な事業で女性の健やかなライフスタイルをサポートする同社らしいオフィス環境だ。
それを象徴するのが1階部分。社員のためにヨガスタジオやフィットネスジム、シャワールームを設置。仕事で疲れたときもここでリフレッシュすることができる。社員や取引先向けに、有機・特別栽培の野菜、果物を使ったジューススタンドやレストランもある。社員食堂として使うほか、展示会などの際には来場者をもてなす。11月に開催された16年春展の際にも、飲食事業で扱うハンバーガーやクレープといったメニューを1階でふるまった。社内のいくつかのフロアでは、ジューススタンドで作ったコールドプレストジュースを販売しているという。
同社が一棟借りしている同ビルは、建築家の村野藤吾氏によるもの。70年代に建てられた古いビルだが、内装を一新し明るく開放的な空間にしている。2階はホール、3階はプレスルームとして広いスペースを確保し、展示会場としても使用する。
■ドーム 新オフィスは軍施設がモデル 勝つための空間に
急成長中の米スポーツウエアブランド「アンダーアーマー」の日本総代理店、ドームが9月に東京・有明に建設した新社屋は、「ビジネスは戦い」(安田秀一社長)との前提に立った〝勝つ〟哲学を貫いた空間になっている。イメージしたのは、「あらゆる機能を研ぎ澄まし、無駄が無く、構成するすべての要素に具体的な意味がある」軍隊の基地だ。
戦いに勝つには「司令官の意思が隊員に瞬時に伝わり、隊員の状況を司令官が瞬時に把握することが不可欠」として、部門ごとに人員を1フロアに収容するとともに、担当の役員室上部にデッキを作り、フロア全体を見渡せるようにした。これは建物自体がかつて天井の高い倉庫だったため実現した。また、情報共有をしやすくするため、高さ3㍍・幅5㍍の16面マルチモニターを3フロアに設置したほか、打ち合わせスペースなど40カ所以上にモニターを置いた。
一方で、精神的な癒やしや安らぎを得られるスペースも必要として、社員の座るデスクはフリーアドレスとはせず、固定制を採用。体調・体格に合わせ量をカスタマイズできる、高タンパク・低脂肪のメニューを揃えたカフェスペースや、社内美容室も設けた。
■ラブリークィーン 屋上に芝張って開放的な空間
キーワードは「エコ」。それがラブリークィーンが12年11月に営業を開始した岐阜市の新オフィスのテーマだ。築30年近い旧本社近くの倉庫を再生建築し、外壁や扉、エントランス石庭に廃材を活用している。
中でも一番の見せどころは屋上だ。所々に芝を張らせて開放的で落ち着く空間にした。衣料廃材を再利用した土壌を使い自然環境にも配慮する。芝は近くだと分かりにくいが、実はコーポレートマークの〝ラブリーハート〟の形にしているものもある。空から見ると奇麗なハートの形を確認出来る。空きスペースで社員が枝豆を作ったり、花を植えたりするなどしている。
椅子を置いているので、「晴れているときはお弁当を食べている人もいます」(同社)。ほかにも懇親会で使ったり、気分転換で外の空気を吸ったり。
時には上司への悩み相談の場として使われることもある。
完成から3年が経過した今でも良い状態に保たれているのは日々の清掃のおかげ。11チームに分けられた社員が交代で毎日8時45分から20分間、芝に水を与えたり、掃除したりする。社内に設置した環境整備委員会が月に1回、点検を行ってチェックしている。「清掃を面倒くさがる社員はいない」のは、社員にとって欠かせない場所になっているからだろう。
■千趣会 本社ロビーに浮かぶ立方体 実は社内向け収録スタジオ
通販主力の千趣会大阪本社では1階ロビーに巨大なキューブ状の空間が浮かんでいる。実は、これは社内放送を収録するスタジオだそうだ。電気を消していると気付かない人もいるが、収録中などは不思議な光景となる。
昔は衛星放送を使って、全国支店に社内テレビ放送を流していたが、放送日に見られない人もいた。そこで、08年の新本社建設に伴い収録専用のスタジオを設け、ロビーに目立つように配置した。現在、月1回20分程度のニュースを広報部が制作し、社内イントラネットに載せて、個人のパソコンでいつでも見られるようにしている。1階ロビーでも映像を放映し、他の事業所にはDVDも送っている。
ニュースの内容は新規事業の紹介や新製品の発表、各種イベントの模様などさまざま。新しいアプリの操作方法や機能性肌着の特徴、全社事業など担当者が説明する。メールや資料よりも映像で見る方がわかりやすいと社内でも好評という。