《15~16年秋冬パリ・コレクション》
ビストロに集う女性たち シャネル
【パリ=小笠原拓郎、青木規子】15~16年秋冬パリ・コレクションに、今の時代にふさわしい女性らしさや官能性を探る動きが見られる。グラマーやセンシュアルといったキーワードを挙げながらも、それを画一的なスタイルではなく、多面的に表現するのがトレンドとなっている。
シャネルは会場であるグランパレの中に巨大な飲食店「ブラッスリー・ガブリエル」を作り上げた。店内ではギャルソンたちがいそいそとサービスに励んでいる。そこに登場したのは、シャネルのアイコンを再解釈したフレンチシックなスタイルのモデルたち。店に集うゲストをイメージしてか、セーターに膝丈スカートのリアルスタイルから、フェザー刺繍のボリュームコートの女性まで、幅広いスタイルを見せている。
軽快なパンツルックもあれば、オーガンディを重ねたAラインドレスも。スカートも膝丈や膝下丈のフレアラインのほか、くるぶしまでのストレートもある。その中で、秋冬の象徴的なアイテムは、エアパッキンのような立体のディテールを重ねたもの。ツイードやウールのクラシックなスーツやブルゾンの袖や身頃に、立体的な装飾を重ねる。
キルティングのブルゾンも含めて、立体的なふくらみの装飾がトップを彩る。ブラック&ホワイトのメゾンのアイコンからは、カフェのギャルソンのスタイルを思わせるボウタイにジャケット、タブリエのようなアイテムのコーディネートを作った。
ハンドクラフトの技術を集めて ヴァレンティノ
「センシュアリティー&インディペンデンス」(官能と自立)をキーワードに、ヴァレンティノは82ルックの壮大なコレクションを見せた。コレクションのイメージとなったのは、画家クリムトの恋人のエミリー・ルイーズ・フローゲと、英国のデザイナーのオジー・クラークのパートナーだったセリア・バートウェル。
2人の女性からイメージして、はかなさと官能性を秘めたコレクションを見せた。ショーの前半は黒とアイボリーで見せるグラフィカルなライン。チェックとトライアングルの柄をドレスやセーターにのせる。胸元にスクエアな布を垂らしたミニケープのディテールも、ジオメトリックな雰囲気。そこからワインやペールブルー、ベージュを組み合わせた繊細なレースや刺繍のラインへ続く。クチュールメゾンの技術を背景にした繊細なテクニックがいっぱいで、ドレスはマクラメやレースなど異なるレースを切り替え、レザーにレースや刺繍を重ねていく。
そこに、セリア・バートウェルとのコラボレーションによるフローラルプリントやバタフライモチーフを差し込む。イブニングはクリムトの絵画のような黒とゴールドが軸になる。フィナーレに登場した、映画「ズーランダー」のベン・スティラーとオーウェン・ウィルソンに観客は総立ち、熱狂の中、幕を閉じた。
(写真=大原広和)(続きは繊研新聞で=お申込はこちら)