【パリ=小笠原拓郎、青木規子】ビッグブランドを筆頭にファッションビジネスがシステム化される中で、コレクション全体に重苦しさや閉塞(へいそく)感が漂っている。そんな中で、管理化されたファッションシステムから距離を置いた、インディペンデントな若手デザイナーが勢いを見せている。その時代感は、80年代末から90年代初めに、マルタン・マルジェラに代表されるシャビー、グランジムーブメントが起こった時とも重なる。ストリートの支持を背景に、情熱と技術を持った若手が閉塞感を打ち破って、新しい時代を作り出そうとしている。(写真=大原広和)
迫力のビッグシルエット=ヴェットモン
パリ11区の中華料理店を舞台に、ヴェットモンがパワフルなコレクションを見せた。ショルダーが張り出したテーラーリングにねじれたパンツ、オーバーサイズのワークシャツは背中にもシャツを重ねながらベアバックに仕上げている。壁紙タイルのような柄をビニールにのせて、ブーツやエプロンドレスに。肩にフリルを飾った花柄やラメのドレスも、全く甘さが感じられない迫力だ。
スエットパーカもうなじにカットアウトのディテールが入って、エフォートレスなムードなど皆無だ。バックに流れる轟音(ごうおん)のヘビーメタルにのせて、SF映画のポスターのような柄のマキシスカートや、袖がぶらぶらと泳ぐスエットトップを繰り出す。その粗削りの存在感は、今のファッション市場に欠けているエモーショナルな何かをはらんでいる。