学生とのコミュニケーションを重視した採用活動が広がっている。専門学校生から高い支持を得るマークスタイラー、選考中の離脱や内定辞退者が少ないAOKIでは、社員と触れ合える体験型の企業説明会やイベントに注力。不安の解消とそこで働くイメージの創出につなげている。
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チームで目標達成する人材来たれ
「人を大切にする」社風は、本部から販売現場まで貫かれている。それは採用活動で学生と接する時も変わらない。人事部でも社風はもちろん、AOKIのファッション事業の最前線を担う販売職の魅力を伝え、学生と企業がより深く理解し合える採用活動に全力を注ぐ。人事部人財採用課マネジャーの脇本実さんと同チーフの野口瑞穂さんに聞いた。
――採用活動の特徴は。
脇本 24年の採用活動から5日間のインターンシップを始めました。これは選考前に企業研究の間口を広げることで、AOKIの社風や販売職の魅力を学生に伝えることが目的です。現場の社員に話を聞いたり、店舗見学、接客体験をしたりと仕事の難しさも含めて学んでもらう機会です。
野口 さらに深く接点を持ちたい学生には、OBなど先輩社員の座談会や社員へのQ&Aも可能です。逆に、気軽に参加できる「オープンカンパニー」(オンラインで3時間)もあります。
――最近の採用状況は。
脇本 25年卒の大卒内定者は66人。高卒は2月まで選考しますが、現状28人。熱心な学生が多く、売り手市場であっても早期から就職活動への取り組みが目立ちます。早いと大学2年生からインターンシップを体験するのが普通になってきました。
野口 優秀な学生は早期に多くの内定をもらい、その中からしっかり吟味して入社先を決めるので、内定を出して終わりではなく、その後のサポートが重要になります。どんな人や環境で働くのかを理解してもらうのはもちろん、内定者同士の交流イベントも設けています。同期との関係構築をサポートすることで働く不安の解消にもつながります。
――どんな人を求めているか。
脇本 ①経営理念に共感する②誰かのために本気で行動、他者のために自己のベストを尽くす③一つのことを周りを巻き込みやりきる力のある人です。小売業で顧客満足度を高めるためには、個人ではなくチームやグループで目標を達成することが重要ですから、選考では複数の学生によるグループディスカッションで適性を見極めるようにしています。
野口 「人を大切にする」社風を大事にしていますので、面接の後に必ず「学生本人の良かった点をフィードバックする」ようにしています。こうした丁寧な対応からか、選考中の離脱や内定辞退は非常に少ないです。
――研修・教育にも力を入れている。
脇本 当社では内定を出すまでを採用課、その後を教育課が担当しています。採用課がまとめた内定者一人ひとりの特性を教育課が共有し、どの業態・どの店舗に配属するかを決めます。ただ、新入社員の最初の配属先はとても大事なので、一人を決めるのにすごく悩みます。
野口 内定後の研修は教育課が主導しますが、採用課も一緒にサポートします。入社3カ月後の面談では、採用課と教育課の中から、その新入社員とかかわりが深かったメンバーが担当し、前置きなしで悩みが聞けるようにしています。また、新人と先輩社員(10年前入社)との仕事や働き方への意識や価値観の違いを互いに理解し合うように心掛けています。
――今後の採用計画は。
脇本 26年卒の採用数は前年に比べて増やす目標を設定しています。当社では郊外路面の大型店を中心にした主力業態「AOKI」とSC中心に出店するビジカジスタイルを提案する「オリヒカ」業態があります。今後の成長戦略として、オリヒカの出店拡大を計画しているため、新卒採用に力を入れています。人事戦略は経営戦略と連動するものなので、これからも一緒に成長できるメンバーを増やしていきたいと思います。
■会社概要
- 売上高 1000億3800万円(24年3月期)
- 主要業態 AOKI、オリヒカ
- 店舗数 593店
- 従業員数 正社員1749人
(繊研新聞本紙25年1月17日付)