Ritoデザイナー・クリエイティブディレクター 嶋川美也子さん 初の期間限定店でフルライン

2021/04/26 06:27 更新


 レディスウェア「Rito(リト)」(スタイレム瀧定大阪)をデザインする嶋川美也子さん。このほど、単独としては初の期間限定店を東京・表参道に出した。スタイレムでテキスタイルデザイナーを務めていたが、16年に立ち上げたブランドで、いずれは「旗艦店を出したい」という。

(高田淳史)

■大半がオリジナル生地

 スタート以来、卸先は有力な百貨店やセレクトショップなど40以上に拡大した。楽天ファッション・ウィークにも参加している。昨年からEC販売を始め、今年本格化する。しかし「ECだけでは限界がある。リトを感じてもらうためにフルラインを見せたかった」ため、期間限定店を出すことにした。

 21年春夏のテーマは、循環型の服作りをイメージした「コンティニュアス・ストラクチャー」。「偶然だったが、スタイレム瀧定大阪が始めるポリエステル繊維を、植物を育てる土として再利用するプロジェクトとコンセプトが一致した」ことで、急きょ楽天ファッション・ウィークでの打ち出しにも人工培地を活用した。期間限定店では、今春夏のウェアと一緒に、ポリエステル培地を使った観葉植物を販売した。

 ウェアの7、8割はオリジナル生地で作っている。というよりもむしろ、「軽さ、落ち感、ハリ感、透け感など作りたい服から逆算して糸、織り、染色加工を含めて組み立てて、生地を作っている」。テキスタイルデザイナー出身ならではのこだわりだ。シーズンを越えて使い続ける生地がある一方で、「駄目なものはすぐ変えることもある」。だからこそ「残反や製造工程で出る繊維廃棄物を土に再生するポリエステル培地の話を聞き、これだ、と思った」。

東京・表参道の期間限定店

■自由に長く着てもらう

 ブランドを立ち上げて5年。服の作り方が変わってきたという。「当初はどうしても生地目線すぎたり、人に気に入ってもらいたい、世の中にないものを作りたいという気持ちが強かった」。しかし、コロナ禍を経験し、「着る人によって着方、楽しみ方が違う。優しく、押しつけがましくない服、長く楽しめる服を丁寧に作ろう」と気持ちやデザインが変わってきた。例えば、前と後ろ、どっちで着ても素敵に見えるワンピースやポケット部分が着脱でき、ポケット部だけでもアクセサリーとして使えるワンピースなど着る人が自由に楽しめるデザインが増えた。

 「ブランドの顔にしたい」というのがコネクテッドラインと名付けたデザイン。シャツとキャミソールをセットとしても着られるし、シーズンをまたいで、別のアイテムともコーディネートが決まるデザインにしている。よく見るとシャツなどの脇下に二つのボタンホールが開いている。ここにキャミソールなどインナーに付けたリボン状の生地を通すことでセットになる。また、通したリボンがデザインアクセントにもなる。「買ってくれた人がSNSで様々な着方をアップしてくれる。意外な着方も多く自由に楽しんでくれています」とうれしそうだ。

 リトの平均単価は約3万円。顧客は20代後半から45歳前後と幅広い。「自社ECサイトで2枚買いしてくれる顧客もいる」とファンが増えてきた。海外からの評価も高まっている。英国やドイツ、フランス、韓国などの有力百貨店やセレクトショップ約20に卸先が増えた。今後、海外向けをさらに伸ばす。

様々な着方やコーディネートが楽しめる工夫を施す
テキスタイルデザイナー出身の嶋川美也さん


この記事に関連する記事

このカテゴリーでよく読まれている記事