20年秋冬コレの見どころは?

2020/02/07 05:00 更新


20年秋冬コレの見どころは? 小笠原、青木の両記者が語る

2020年秋冬コレクションの見どころはー―。マクロでは好景気のアメリカとは対照的に、欧州やアジアの消費は低迷するなどまだら模様の世界経済。コマーシャル化しているブランドと、クリエーションや手仕事にこだわる数少ないメゾン。この構図がどう変化するのか、しないのか。

ニューヨークに出発前の弊紙のデザイナーコレクション担当記者、小笠原拓郎編集委員と青木規子記者に話を聞いた。

―ニューヨークの見どころは。

青木 全般的には新ブランドの登場や協業などの話題は少なく、ニュースに乏しいように感じます。

小笠原 マクロ経済は絶好調と言うけど、バーニーズの破綻やオープニングセレモニーの閉店などファッション小売りは厳しい。「ニーマン・マーカス」を核店舗に据えたウエストサイドの新しい商業施設を秋に見てきたが、そんなに盛り上がってなかったしね。

青木 「3.1フィリップ・リム」や「ジェレミー・スコット」など発表を中止するブランドも目立ってます。ただ、これまでファッションウィークの後に開催していた合同展の時期が重なっているので、相乗効果に期待したいですね。

小笠原 NYファッション協議会会長のトム・フォードは自分のブランドをLAで披露する。アカデミーのレッドカーペットに合わせてやったほうが注目を集めるからかな。彼に続くブランドが出てくるようなことがあれば、LAファッションウィークに変わるかもね。ないか。

青木 それはどうでしょう笑。

小笠原 ただ、ニューヨークのデザイナーブランドが盛り上がっているかと言うとそうじゃないからねえ。とにかく見なきゃいけないのは、「ザ・ロウ」。「エフォートレス」「ノンシャラン」の代表格で、もの凄い勢いでセールスを伸ばしてるしね。

ザ・ロウ20年春夏(ブランド提供)

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―では、ロンドン。

青木 若いブランドが売りのロンドンですが、今回はデビューブランドが少ないようです。そんな中で話題なのが、2回目となる「パブリックショー」でしょうか。有料で一般人を入れるコレクションは前回まずまず好評だったので、今回は回数を増やして1日4回開催されます。ファッションウィークとしてはいい収入源になりそうです。

小笠原 「シモーン・ロシャ」は引き続き見ておきたいし、「JWアンダーソン」がどうなるか、だね。前回少しマンネリ気味だったし。「バーバリー」は(リカルド・)ティッシになってから、ややラグジュアリーの方に寄せていってる感がある。カジュアルも減らしているし、ビジネス的にも英国のナショナルブランドというよりも、もうちょっとラグジュアリーのカテゴリーに行こうとしているようにみえるから、それがどうなるか注視したい。

青木 ロンドンではサステイナブル企画にも着目したいです。1月のロンドンメンズではペットボトルの水の無料配布をやめたそうですし、半分近いブランドが紙のインビテーションをやめて、Eインビテーションに切り替えました。ポジティブファッションエキシビジョンに参加するのも全てサステイナブルです。

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―ミラノはどうかな。

青木 ここ数年通り、5日間というコンパクトなウィークになりますが、「グッチ」「プラダ」「ボッテガ・ヴェネタ」「ジル・サンダー」など有力ブランドが参加するので重要度は高まっているように感じます。それ以外では、「エミリオ・プッチ」のカプセルコレクションのゲストデザイナーに「コシェ」のクリステル・コシェールが迎えられたのが話題です。「JWアンダーソン」が新たにメンバーに加わった「モンクレール・ジーニアス」も楽しみです。ここ数年、ミラノは他と比べてファッションのキャッチーで楽しいムードが漂っているので、そこにも期待したいですね。

グッチ20-21秋冬メンズ(大原広和)

小笠原 1月のメンズでは「ジル・サンダー」が凄く良かったんだよね。今のデザイナーになって確実に新しいマーケットを作っている。そう言えば、グッチも久しぶりにメンズ単体でコレクションを披露した。ミケーレは自分の世界観は性差がないからと一番最初にメンズとレディスを一緒にやったのに今回は分けてやる。これが他のブランドにどう影響するか、気になるね。「バレンシアガ」やボッテガがどうするんだろうか。

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―最後にパリ。

青木 日常的なデモやストを見ての通り景気は悪く、業界自体も勢いはありません。そんななかで面白いのがアフリカブランドの急増です。ニューヨークでも東京でもそうですが、ここ1年ぐらい目立っているカテゴリーです。20年秋冬はショーもプレゼンもさらに増えているので、かなり目立つのではないかと予想しています。「ケネス・イズ」もショーをやりますし、昨年、LVMHプライズのグランプリに輝いた「テベ・マググ」もプレゼンテーションをします。アフリカブランドの若々しいパワーは新鮮ですし、期待したいです。

ケネス・イズ20年春夏

小笠原 ブランドで言えば、ここんとこ毎回言ってるけど「ヴァレンティノ」と「(コムデ)ギャルソン」かな。メンズの「ドリス(・ヴァン・ノッテン)も凄く良かった。プーチ社に身売りしてクリエーションに集中できているんじゃないかな。アントワープのロイヤルアカデミー出身の「ボッター」も注目。「ニナ・リッチ」もやってる。

青木 賛否両論ありますけどね。

小笠原 クオリティは高いと思うよ。

青木 小笠原さん、1月のオートクチュール見てますよね。そこからトレンドが読み取れたりしますか。

小笠原 ものすごくシンプルになっていた。伝統的な手仕事は生きているけど、フォルムやシルエットはシンプルだった。前回のプレタポルテのコレクションがシンプルに振れたから、これが今回どうなるか。

青木 先月から今月にかけて展示会が行われた20年プレフォールコレクションでは、シンプルなスタイルに艶のある女性らしさが加わっていました。続く20年秋冬も、シンプル、ピュアネスの発展系が見られるのでは、と期待しています。

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小笠原拓郎編集委員(左)と青木規子記者


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