アウトドア用品メーカーの米パタゴニアが今年、創業50年を迎える。クリーンクライミングの推奨、売上高の1%を環境保護に寄付、オーガニックコットンへの全面切り替えなど、アパレル・アウトドア産業に先駆けて取り組んできた。これまでの歩みと今後を日本支社長のマーティ・ポンフレー氏に聞いた。
(杉江潤平)
環境保全へ行動さらに
――昨年9月発表のオーナーシップ制度の変更をどう受け止めたか。
あの発表が出された時、従業員にとっては、体中のエネルギーが瞬間的に跳ね上がったように感じられた素晴らしい瞬間だった。当社は「環境インパクトの軽減」を目指しながら、利益も追求しなければならず、現実には常に葛藤がある。しかし、オーナーシップモデルの変更で明確になったのは、パタゴニアは利益をしっかりと追求していく、ということ。つまり、利益が増えれば増えるほど、ビジネスの効率が高まれば高まるほど、地球の環境保全に力を注いでいる人たちの支援につながることがはっきりした。この発表で点と点がつながったと思う。
ビジネスの世界で、これほど模範となる行動をしたリーダーはいないだろう。(創業者の)イヴォン・シュイナードとその家族が会社を手放したことで、パタゴニアが「エンジン・フォー・グッド(良いことのために動く)」だけでなく、業界全体に対して「違うやり方がある」と行動で示したからだ。
一方で、私自身は「今以上にもっと行動しなくてはならない」と強く考え直した。「パタゴニアにとって何がこれから必要で、どうしていくべきか。君らもしっかり考えてほしい」。彼の記した文章にはストレートにつづられていないが、行間からそうしたメッセージが込もっていると感じた。
――社内で変わったことは。
私たちは何にフォーカスし、何を成し遂げるべきか、より活発に議論するようになった。3月に発表されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書のまとめでは、(産業革命前からの)気温上昇を1.5度に抑えるには、温室効果ガス排出量の削減ペースをさらに前倒ししなければ間に合わない、ということだった。緊急性が増し、確実に時間的余裕がなくなってきている。私たちが長じていることに的を絞り、早く実行に移さなければならない。
■環境団体が所有
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