【販売員のやりがいってこんなところ】「マンシングウェア」高島屋横浜店 福岡こころさん 頼り頼られ、感謝の関係を築く

2025/06/18 05:29 更新


 ファッションが好きで、自分なりの接客や提案などで喜んでもらったり、すてきになったり、楽しく感じてもらえる瞬間に魅力を感じるスタッフも多い。一方で、販売員採用は全体的に苦戦傾向になっている。現場で輝き、キャリアを積んでいる販売職にやりがいを聞いた。

 川徳(盛岡市)にある「マンシングウェア」「ランバンスポール」担当を経て、現在はマンシングウェア高島屋横浜店の販売員として働く。客の気持ちに寄り添った〝共感接客〟でファンを増やし、23年度には優秀なセールスコーディネーター(販売員)を表彰するデサントジャパンの社内表彰で、新人賞に輝いた。

独自の「カルテ」作成

 小・中・高校とバスケットボールをしてきたこともあり、スポーツブランドの「デサント」にはなじみがあった。「ずっと続けてきたスポーツに関わる仕事がしたい」とも考え、デサントジャパンの採用試験に応募。23年4月に入社した。

 服好きだったが、ゴルフの経験はなく、アパレル販売も初めて。だからこそ福岡さんは、ウェアの知識や服の接客ノウハウを学びつつ、ゴルフに関することで分からないことは知ったかぶりせず客に素直に聞くようにした。「あのクラブはどんな場面で使うのですか?」「ゴルフ場では今、どんなウェアを着ている人が多いのでしょう?」――謙虚に聞く姿勢が好感を持たれ、優しく教えてもらう客を増やしていく。会話をきっかけに距離を縮め、年配客には「こころちゃん」と親しく呼ぶ人も出てくるようになった。

 初めに配属された川徳店は都心店舗と比べて客数は少ない。接客機会も少なく、同期との差を感じて焦ることもあったが、「逆に一人ひとりのお客様と深く付き合え、接客の時間を長くできる」と考えた。特に購買客に送る礼状などのダイレクトメールは力を入れ、接客時のやり取りなどを必ず書き、通り一遍にならないよう工夫した。

 購入サイズや好み、客の特徴や雰囲気などを記した手書きの「カルテ」も独自に作った。次に来店した際、前回までに得た情報を踏まえ会話のきっかけにしたり、服の提案に生かしたりするためだ。こうした取り組みを続けると客との関係性が強まり、入社1年目(23年4月~24年3月)から数字として表れる。特に自社アプリ「クラブデサント」の新規獲得数やセット販売率は目標や店舗平均を上回る結果を残すことができた。

モットーは「明るく元気に笑顔で」と福岡こころさん。2年間務めた川徳時代に記していたカルテノートは5冊になった

 アプリは客自身にダウンロードする意思があっても、スマートフォンの操作方法や設定変更のやり方が分からない人は多い。そんな人には端末を見せてもらい一緒に設定した。セット率が向上したのは、コーディネート提案のスキルが高まったため。初めは1点を買ってもらうのが大変だったが、親しくなってくると、スタイリングに適したウェアや小物を一緒に薦められるようになった。

上位店に異動、夢実現へ

 夢は店長。そのためには大都市圏での販売経験は必須と考えていたが、25年4月にマンシングウェアの売り上げ上位店である高島屋横浜店への異動がかなった。購買客数は約4倍に増えたが、川徳店で培ってきたスタイルは変わらない。

高島屋横浜店にあるマンシングウェアのショップ。店長の夢実現へ、大都市圏の店で経験を積む

 販売のだいご味は「多くの人と関係を築けること」。実際、盛岡から横浜への異動が決まると多くの顧客が別れを惜しみ、店に会いに来てくれたという。「あなたは私の家族よ」と言われたときは胸が熱くなった。「本来は売る側が感謝するものなのに、お客様からありがとうと言われることがうれしくて、モチベーションになっている」という。

■ここがすごい!

 「福岡さんは、目標達成に向けて努力する力があります。入社3年目になるこの春から地元を離れ、かねてから希望をしていた「売り上げ上位店舗での勤務」が始まりました。自身の理想的なキャリアプランを着実に歩んでおり、素晴らしいと思います。今まで身に着けた知識やスキルを向上させて、より主体的に業務に取り組むことを期待しています」(マンシングウェア高島屋横浜店 清川奈緒美店長)

(繊研新聞本紙25年6月18日付)

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