新オフィスお邪魔します! 今の時代を映す企業に聞く強化ポイント

2023/05/04 06:30 更新


 コロナ下で本社を移転した企業は数多くあります。リモートワークの浸透、業務の効率化、コンスタントなSNSの発信が不可欠になったことなどが背景です。取材で訪れる際、本社の在り方や機能、必要とされる要素が変わりつつあることがわかりました。今の時代を映す新しいファッション企業の本社にお邪魔し、強化・変化したポイントを聞きました。

ジュン 会話が弾むボーダーレスな空間

 コミュニケーションを活性化させる目的で21年12月、一回り小さなオフィスに移転した。社員が通いにくくならないよう、前のオフィスがあった隣駅の東京・外苑前駅近くのビルの3、4階(有効面積は約2635平方メートル)だ。コロナ禍前から働き方改革を進めていたこともあり、ごく自然な流れで移転が決まった。

 2フロアで作業スペース、プレスルーム、会議室、撮影スタジオなどを完備する。フロアの中央には開放的なシースルーの会議スペースがある。これを囲むようにして、作業デスクが配置されている。

ブランドや職種にとらわれない環境

 もともとフリーアドレス制だったが、移転後は曜日ごとに座る場所が変わるフレキシブルなルールを採用。月・火・金曜日はブランドごとに、水・木曜日はブランドを横断して職種ごとに座るといった内容だ。社長室を設けず、佐々木進社長も社員と肩を並べて仕事する。ノウハウを共有し合える環境で、個人とブランドの成長につなげる狙いがある。

 会話が弾みやすい空間は至るところにある。「口に出すたびにクリエイティビティーを刺激できるように」との思いで名付けた様々なアーティスト名の会議室、同社が運営する「サタデーズニューヨークシティ」のカフェコーナーなどだ。カフェはバリスタの研修の場として設置しており仕事の合間においしいコーヒーや軽食が楽しめる。

アーティスト名が付けられた各会議室。中にはその人の作品も

 一角は写真撮影と動画配信用のスペースとして、白のれんが調とコンクリートの打ちっぱなし風の壁に切り替えた。撮影スタジオも別にあるが、手軽な撮影はこの場で行っている。

一角に設けた撮影スペース(ジュン)

TSIホールディングス グループを一極化して効率的に

 22年12月に東京・青山一丁目駅近くに移転した。分散していたグループ会社の拠点をまとめることで、効率化を進めたい考えだ。撮影スタジオや全ブランド合同の大型ショールームを備え、あらゆる業務を社内で完結する。「アースカフェ」を社員専用に入れるなど、福利厚生にも力を入れている。

好評の社員向け「アースカフェ」

 コロナ禍による業績悪化、働き方の変化が移転のきっかけ。7カ所に点在していた拠点を一つにすることで、業務効率化と家賃を圧縮した。

 目指したのは、テレワークを前提としたコンパクトなオフィスだ。地上7階、地下2階で、1階はショールーム、地下には撮影スタジオを構えた。そのほかのフロアには大小合わせて24の会議室、各グループ会社のオフィスがある。隣接するビルの一部も借り、ゴルフ関連の事業のオフィスを置いた。

 肝となるのは、広さ約1500平方メートルのショールーム。グループの26ブランドのブースが一堂に会するほか、展示会やイベントを開催できる「エンタメエリア」、社員向けの飲食店としてアースカフェがある。カフェでは店舗メニューの一部を社員向け価格で提供する。

26ブランドが集結する1階ショールームが自慢

 地下の撮影スタジオには専門スタジオに負けない設備が揃っている。ルックと商品の撮影や動画配信が可能で、常にフル稼働の状態。今後の課題は、1カ所に集まったグループ会社同士の交流の深化。効率化とコストカットのみで終わらず、各社の個性を生かしたシナジーの創出を模索する。

地下の撮影スタジオは本格的な設備が揃う

アニエスベージャパン ブランドのDNAを発信

 目指したのは「アトリエを中心としたクリエイティブな場所」。ブランドのDNAを発信したいと、前オフィスの更新のタイミングで、22年3月に移転した。東京・目黒駅から徒歩2分のビルの8階で、総面積は約820平方メートル。晴天の日中は照明をつけなくてもいいほど明るい。オフィスビルでは珍しい、庭園があるのも特徴だ。

 ポイントは四つ。一つ目は、クリエイティブが広がる空間だ。バッグやキッズラインの企画開発を行っているアトリエをフロアの中心に配した。出社するたびに物作りの原点を実感できる。新オフィスの顔ともいえる。

本国パリと連携して物作りしているアトリエを中心に

 二つ目は、働く環境の整備。本国パリの本社にインスピレーションを得て、ほぼすべての壁を取り払った。各セクションの仕切りも無くしてフリーアドレス制に。商談スペースや会議室も開放的で、社内外の自由な会話が飛び交う。

 三つ目は、ブランドが核とするサステイナビリティー(持続可能性)。可能な限りプラスチックを使わず、什器はウッドやメタルで揃えた。モルタルに見える床は、木質のパーティクルボード。庭園ではハーブやレモンを栽培し、担当のスタッフが毎日ハーブティーを作って社員を癒やす。

サステイナブルに配慮した什器や床
自然を感じられる心地良い空間。庭園では夏にトマト、秋にサツマイモなども栽培する

 四つ目は、創設者のアニエス・トゥルブレ氏が長男と03年に購入した帆船「タラ号」のモチーフ。大会議室の壁や巨大な模型、テーブルの本など、あちこちでタラ号が目に入る。〝アニエスベーらしさ〟をフロアの隅々に散りばめた、特別な空間となっている。

ユニオンゲートグループ ショールーム完備しコスト削減

 22年5月、東京・南青山から外苑前駅すぐのビルへ移転した。9、10階を借り、下階はショールーム、上階はオフィスエリアに。広々としたオフィスで出社率の戻りにも柔軟に対応するほか、展示会を社内で開けるようにした。総面積は約1400平方メートル。

 移転のきっかけは21年にフィーゴの全株式を取得したこと。伊レザーブランド「フェリージ」のチームが加わり、既存のオフィスでは手狭になった。

 ラグジュアリーホテルをイメージしたという9階エントランスの奥には、大理石のバーカウンターがある。夜は福利厚生として自由にお酒を楽しめるようになっており、社員から好評だ。同フロアのほぼ全体がショールームで、「ブリーフィング」など自社で扱う全てのブランドの展示会を社内で開ける。以前は外部の会場を借りていたため、コストカット効果は大きい。

エントランスからラウンジスペースはラグジュアリーホテルをイメージ

 10階のオフィスエリアは、拡大した会社の規模にも対応できる広さだ。テレワークが減って出社率が上がっても、安心して業務ができる。フリーアドレス制ではないが、雑談スペースで部署の違う社員が交流できる。会議室も充実しており、最大の部屋は仕切りを取って50~60人ほど収容できる。

 社員からは「駅近になって出社が楽」「バーカウンターに高級感があり気持ちが良い」といった声が上がっている。広くきれいなショールームはバイヤーからも評判だ。今後は立地を生かして、神宮外苑花火大会を観賞する関係者向けイベントなども計画している。

ショールームを完備して社内で展示会を開ける

(繊研新聞本紙23年4月24日付)

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