〝古着の街〟下北沢の客層が変化 古着屋の数は約2倍、家賃上昇の課題も

2023/07/19 11:30 更新


古着屋が多い駅前商店街は平日もにぎわう

 〝古着の街〟下北沢に変化が起きている。古着屋巡りを楽しむ若者やインバウンド(訪日外国人)客に加え、古着のイメージ向上で大人客も増え始めた。古着屋同士が協力してメディアやイベントを立ち上げる動きもある。一方で地価の上昇などの課題も出てきた。

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コロナ禍で増加

 下北沢駅前は平日でも若者を中心に多くの人でにぎわう。買い物に来た大学生の男性は「アメカジ古着を買いによく来る。安い物から貴重なビンテージまで揃う」と話す。

「アメカジ古着を買いに来た」と話す大学生

 下北沢の古着やの変遷について駅周辺に6店を構える古着小売り・卸のデザートスノー(東京)の鈴木道雄代表は、「若い舞台関係者による安い服や衣装の売り買いが盛んで、古着屋が集まってきたようだ。16年ごろからはファッションに強い個店が増えてきたと思う」と見る。

デザートスノー鈴木代表

 近年の盛り上がりの要因の一つにコロナ禍がある。

 「渋谷や原宿が〝密〟な場所とされたことで、下北沢に人が流れてきた」と鈴木代表。集まってきた若者の間で古着屋巡りが人気になり、21年ごろに100店ほどだった古着屋は今、約180店まで増えたという。

 客層も変化した。コロナが落ち着いてからはインバウンド客も増えている。「SNSで情報を得た海外の客が来ている。特に日本旅行慣れしたリピーターが多い」(鈴木代表)。ブームを背景に古着のイメージが向上したことで、50代以上の高感度な客の姿も出てきたという。

情報誌も登場

 さらに街歩きを楽しんでもらうためにデザートスノーが立ち上げたのが、下北沢の古着情報に特化したフリーペーパー『シモフル』だ。

 鈴木代表を編集長に、製作は業者に委託。常時150店ほどの情報を掲載するほか、様々な店のスタッフをモデルにした雑誌風のページも充実している。オリジナルのトートバッグに入れて配る配布方法も買い物客から好評だ。

下北沢の活性化のために創刊したフリーペーパー『シモフル』

 下北線路街の空き地を会場に、古着販売と音楽ライブを合わせたイベント「シモフルパーク」も開いている。新規客開拓だけでなく、同業者の交流の場としても機能している。

 最近は同誌のインスタグラム版も強化している。下北沢で買い物をしている客へのインタビュー動画などが人気で、数万回再生される投稿もあり、海外からも反応がある。

 街の活性化の一方、課題も出始めた。「家賃上昇が著しく、ここ数年でほぼ倍になった」と鈴木代表。新規参入が難しくなって大手で均質化されることで、街の魅力である〝カオス感〟がなくなると懸念する。 

 また古着人気の過熱で商品が高騰している問題もある。鈴木代表は、「適価を保つ努力が必要。同時に古着は汚くない、おしゃれというイメージをもっと広めたい」と話す。今後は「下北沢にはまだ古着屋が増えるだろう。今の多様で個性的な街の雰囲気を維持し、どんなカルチャーが育つか見ていきたい」と話す。

買いやすい価格が揃う デザートスノー4号店

 古着小売り・卸のデザートスノー(東京)は、下北沢駅近くに古着店6店を構える。その中でも若者客が多く、特に売り上げが伸びているのが、21年にオープンしたデザートスノー4号店。

 売り場面積は約130平方メートル。広々とした店内には90年~00年代製のいわゆる〝レギュラー古着〟が並ぶ。中心価格はトップが約3000円、全体でも5000円ほどと買いやすく設定している。

90年~00年代の古着が豊富な店内

 よく売れるのはトレンドのオーバーサイズのアイテム。特に「トミー・ヒルフィガー」などのブランドの太めのジーンズが人気だ。

太めのジーンズが売れ筋だ

 鈴木道雄代表は「今後もトレンドを取り入れた仕入れ、適価販売、きれいな売り場作りを重視して運営していく」という。

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