【スペシャル対談】#KuTooがファッション業界に投げかけたもの

2020/02/28 00:00 更新有料会員限定


 ハイヒールをはじめとするパンプスを職場で強制することに反対する運動「#KuToo(クートゥー)」が昨年、大きな話題となった。一般企業ではそれを契機にスニーカー勤務を解禁する動きが出始め、靴業界にも影響を及ぼしている。スニーカー通勤の普及・啓蒙(けいもう)に取り組むウェルネスウエンズデー協会の鈴木代表理事と、署名発信者となった石川さんとの対談から、クートゥーがファッション業界に投げかけたことを考える。

(聞き手・構成は杉江潤平)

◇きっかけは愚痴

 鈴木 クートゥーを始めたきっかけは何だったんですか?

 石川 1年前の1月24日に、ツイッターでつぶやいたことが始まりです。当時アルバイトをしていた葬儀屋では、女性スタッフは5~7センチのヒールで黒のパンプスを履くのが規則だったのですが、立ち仕事なので毎日足が痛く、つらいと感じていました。その日、和室に上がった男性社員の靴を揃えていると、ぺたんこで、甲がきちんと覆われていて軽い。パンプスよりこういう靴のほうが楽だし、革靴だからちゃんと見えて、うらやましいと思いました。その思いを、「なんで足けがしながら仕事しなきゃいけないんだろう」などとつぶやいたら、拡散されたんです。

 初めはただの愚痴ツイートでしたが、それに賛同した人が運動にすることを提案し、また別の人がハッシュタグを考え、キャンペーンが始まりました。

 鈴木 とても考えられているハッシュタグだと感じます。石川さんと同じ思いを持つ人も多かったんですね。活動によって変わったことはありますか?

 石川 署名を始めてから、ヒールの強制をやめる会社がちょっとずつ現れ始めました。クートゥーによって、「上司が『辛かったら(パンプスを)履かなくていい』と言ってくれた」などの報告も受けています。クートゥーには反対派も多く、企業で起きるこうした変化との因果関係を認めたがりませんが。

 鈴木 大きな変化は確実に起きていますよ。私たちはスニーカーの販売もしていますが、「スニーカー通勤が認められたので、買いに来ました」というお客様が、昨年本当に増えましたから。

いしかわ・ゆみ
1987年生まれ。2005年芸能界入り。14年に映画「女の穴」で初主演。17年に芸能界で経験した性暴力を#MeTooし、以降ジェンダー平等を目指し活動。19年10月には英BBCによる世界の人々に影響を与えた「100人の女性」に選ばれる。著書は『#KuToo――靴から考える本気のフェミニズム』(現代書館)。

◇就活生も救いたい

 石川 ただ、クートゥー賛同者には就職活動生も多く、彼女たちをなかなか助けられないのが今の悩みです。企業側が就活生に対し、パンプス以外の靴の着用を認めないと、就活のルール・常識も変わりません。今年は、この問題を現実的に解決できればと思っています。

 鈴木 そこは我々ファッション業界もやらなければならない課題ですね。就活生の足元を見ると、ばんそうこうが見えて大変そうです。今のリクルートスーツを主流にしたのはこの業界だし、それを壊すのもこの業界。我々自身で就活スタイルの常識を変えていきたいと思っています。

 ――署名活動は、19年6月に厚労省に要望書を提出した後も続けていますね。

 石川 実は19年12月に厚労省へ更新した人数を報告するとともに、新たな要望書を付けてもう一度、提出しています。

 今年6月に、パワーハラスメント(パワハラ)防止措置を企業に義務付ける法律が施行されますが、既にパンプスの強制によってけがしながら働く人がいるので、それがパワハラに該当することを、その法律の「指針」に盛り込むよう再要望しました。結局、指針に文言は入らなかったのですが、パンフレットなどで周知を図る約束は取り付けています。

すずき・つとむ
1973年生まれ。大手ファッション企業でブランド責任者や支店長を経験。2009年にマッシュスタイルラボに入社。14年執行役員営業本部長、16年からマッシュスポーツラボ社長。17年3月に一般社団法人ウェルネスウェンズデー協会を設立、代表理事に就任した。

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