【専門店】今、あえて2号店 店として表現の幅を広げる

2020/11/08 06:27 更新


 新型コロナウイルスの影響で、客数が伸び悩んでいるファッション小売店。賃料負担の大きい大都市では店舗の撤退も進む。そんなコロナ禍ではあるものの、今あえて2号店を出す強気な店もある。今回はこの2カ月間に2号店を開いたベテランとルーキーを取材した。いずれも、店としての表現の幅を広げる狙いがある。

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◆急成長を背景に女性客に間口拡大

アマノジャク(東京)

 東京・北千住のセレクトショップ「アマノジャク」は9月20日、東京・千駄木に2号店を開いた。1号店は最寄り駅から徒歩10分超の住宅街にあるが、2号店は最寄駅から徒歩1分、大きな通りに面している。客層の間口を広げることで、1号店と差別化し、企業としての成長を目指す。

 アマノジャクは、18年8月に廣川輝一さん、小山逸生さん、大津寿成さんの3人で立ち上げた。ハイエンドなインポート・ドメスティックブランドをジャンルやテイストにとらわれることなく取り扱っている。実店舗やEC、SNS、ブログなどを通じて、商品の魅力を丁寧に伝えている点が支持されており、若者から年配の大人まで幅広い層を掴んでいる。平均客単価は7万~8万円。19年9月~20年8月の売上高(EC含む)は1億円を突破した。

 1号店は、地上2層で総売り場面積は約53平方メートル。取り扱いブランドを拡充してきたほか、創業メンバーそれぞれに顧客が付いてきたことなどから、1号店が手狭になった。創業以降、順調に売り上げを伸ばしてきたことも踏まえ、2号店の出店に踏み切った。

 1号店はメンズ中心の品揃えだったが、2号店は女性客の獲得も狙う。レディス・ユニセックスブランド専用の売り場を設けたほか、女性社員を新たに採用した。21年春夏のレディス本格化に先駆けて一部商品を販売している「プランC」は、既に好反応を得ているという。

比較的シンプルでベーシックな商品を中心に揃える店内入り口付近。奥がレディス・ユニセックス専用の売り場

 売り場面積約80平方メートルの2号店はこのほか、「ジェイ・ダブリュー・アンダーソン」「エイトン」「トーガ」「08サーカス」「ストーンアイランド」「カラービーコン」「ナマチェコ」などを揃えている。広い売り場を生かし、定期的に取り扱いブランドの催事も開催する予定だ。

 千駄木周辺に高感度なファッションを扱う店が少ないことなどが追い風となり、コロナ禍での開業ながらも順調なスタートを切っているという。客層は男女ともに30~40代が中心だ。新しい顧客づくりに励み、2号店の初年度売上高は約5000万円を目指す。将来的には3号店、4号店も想定している。

店内左奥は催事なども行う空間に。9月は紳士靴「カルマンソロジー」の期間限定販売会を実施した

◆御堂筋に念願の2号店 新鮮な提案絶やさず

ホワイ・アー・ユー・ヒアー・・・?(大阪)

 大阪・南船場にあるセレクトショップ「ホワイ・アー・ユー・ヒアー…?」は8月、同店に近い御堂筋に2号店をオープンした。「ファッション業界で仕事を始めた頃から御堂筋に店を出すのが夢だった」と言うマック(大阪市)の守屋弘司代表。新店は宇宙をコンセプトにした最大の売り場面積で、同店が得意とするモードの提案を強化している。

御堂筋店の外観

 同店は海外のコレクションブランドを軸にモードを提案し続けて約20年。トレンドの変化もあり、「オフホワイト」などのラグジュアリーストリートも加えたが、つねにモードを軸にした店作りを続けている。

 ちょうど20年春夏からトレンドとしてモードへの注目が高まって来ていたことと、長年の目標だった御堂筋沿いで出店候補地が見つかったことから、新店の出店を決めていた。20年春からコロナ禍に突入したが、「とにかくオープンしよう」と実現に踏み切った。

宇宙をコンセプトにした店内の空間

 御堂筋店は路面で売り場面積約250平方メートル。従来から扱う「メゾン・マルジェラ」「リック・オウエンス」「ハイダー・アッカーマン」などと、新たに加えた「マリーン・セル」「ジルサンダー」「JWアンダーソン」などのインポートを中心に品揃えしている。店内は宇宙をイメージした独創的な空間で、「ここでモードを様々な形で表現することに改めてチャレンジしていきたい」と言う。

 オープン後の手応えは、「コロナ禍で売れ行きは決して良いとは言えない」が、「若い世代のお客様は店を楽しみにやって来てくれている」。富裕層の顧客もいるが、「年配層の方は積極的に足を運びにくい状況でもある」と言う。

 コロナ禍に突入してECは伸びている。だが、「実際の商品とそれを演出する空間、スタッフとの会話が十分楽しめる実店舗があくまで重要」とし、引き続き店頭を起点にした発信を強化する。秋冬は「フィア・オブ・ゴッド×エルメネジルド・ゼニア」を推すなど、全国でも数少ない提案を両店で打ち出す。「新鮮な提案を絶やさず、集客につなげたい」と強調する。

「新店でモードを様々な形で表現していく」守屋代表

(繊研新聞本紙20年10月8日付)

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