【販売員のやりがいってこんなところ】「エルーラ」テラスモール湘南店店長 和泉澤真弓さん

2023/08/16 00:00 更新


 キャリアや私生活の経験が接客やスタッフ育成に生き、仕事のやりがいにつながっている。客の立場で一人ひとりのニーズや悩みを引き出し、それに応える提案で喜んでもらえる瞬間に販売のだいご味がある。店頭で輝く店長に話を聞いた。

悩みに応える難しさと喜び 子育ての体験が支えに

 「お客様に喜んでもらえるやりがいを感じた瞬間があって、今も販売員を続けています」と話すのは、アダストリアの「エルーラ」テラスモール湘南店店長の和泉澤真弓さんだ。04年に旧ポイントに新卒入社し、「グローバルワーク」で店長とVMDマネジャーを経験。19年、エルーラの立ち上げと同時に異動した。私生活では小学校4年生と1年生の子を育てる母親だ。

学んだ知識を実践

 ブランドは「大人の悩みが大人の魅力に変わる服」を掲げ、40~50代を狙う。社内では販売員が長く働き続けられる場を作るのも目的に立ち上げた。ブランド独自にパーソナルカラリスト、骨格診断アドバイザーの資格取得支援プロジェクトを行い、日本カラリスト協会と連携して勉強会も開く。学んだ知識を実践するため、店頭ではパーソナル・スタイリングサービスを無料でする。

 和泉澤さんもパーソナルカラリストと骨格診断アドバイザーの資格を取得。知識を生かし、体形の変化や肌トラブルなど悩みを抱える客を魅力的に見せる接客に日々磨きをかける。「より深いところで提案する難しさと喜び」があるエルーラの接客が、販売員としての向上心をかきたてている。

 テラスモール湘南店は近隣の主婦が毎日の買い物のついでに来店する場合が多く、悩みを気軽に相談できる身近な場所として支持される。コロナが落ち着いてきた最近は、お出かけや数年ぶりの友人との再会に着ていく服を探しに来店する客が多い。「お客様の潜在的な気持ちを引き出し、その服を着て出かけてみるわとの声をお聞きした時はうれしかった」という。

テラスモール湘南店には近隣の主婦が来店。悩みを気軽に相談できると顧客も付いている

 半面、自身よりも年上の客に商品を薦める上で「コンプレックス」もある。「体形の悩みだとお客様と私では目に見えて違う。私もそうなんですと共感してみても説得力に欠ける」。そこで、身に付けた資格の知識を活用しながら「何か違うところで力になる」のを常に考えるようにしている。

「客層が明確で、こういう商品が望まれているんだとの視点が研ぎ澄まされている」と和泉澤さん

 加えて、一緒に働く販売員にはブランドがターゲットにする世代もいるため、彼女たちの声を丁寧に拾って客のニーズを引き出すヒントにしている。新作が入荷したら「この服をどう着ますか」などと聞いてみる。空き時間には実際に試着してもらい、自身の接客の参考にするほか、販売員の知識も養う。

 販売員の育成は「どちらかというと背中を押すスタイル」。経験豊富な販売員が揃っているのもあり、一人ひとりが持っているものを最大限に生かしたい気持ちが大きい。「接客ができているのに自信がない控えめなスタッフが多い」ため、接客で良かった点を評価し「他のスタッフにも教えてあげてと間接的に教育する」方針だ。

頼られる存在に

 エルーラには子育て社員が多い。和泉澤さんはエルーラで店長になり2年が経つが、初めの1年は苦労した。店長としてやりたい仕事があっても、子供のお迎えで夕方には退勤しないといけない。子供の急な発熱や体調不良で仕事を早く切り上げないといけない時もある。自身の葛藤はあったが、ママ社員の本質的な理解を得られ「気持ちの部分では楽だった」という。

 学生時代は服飾専門学校に通い、一度は技術職を志望した。結婚と出産を経た今でも販売職を続けるのは、子育ての体験が大きいという。産休・育休から復帰し、グローバルワークで販売員として働いていた時のこと。日常で子供服を選ぶようになり、接客で実経験を絡めながら子供服を薦め、納得してもらえた。自身の経験や知識で客に喜んでもらえる達成感がキャリアの支えになった。

 社内では、子育て社員を対象にしたプロジェクト(人事部と支店マネジャーが主導)で後輩子育て社員に向け、自身の子育ての体験談を話す機会もあった。「子供が小学校4年生になって時短から通常勤務に戻った後も長く働ける」工夫として、「旦那の協力、子供自身の自立の促進、自分自身の働きかけ」の3点を発表した。「先輩ママ社員に相談して助けてもらった経緯もあるので、今度は自分が頼れる存在になりたい」という。

 今後は「子供を育てているので大きな夢はないが、今やっていることを着実に形にしたい」と考える。今月から今年11月にかけて全国で開催するイベントでは、関東エリアを取りまとめる立場も任せられた。「リピーターのお客様には『このブランドがあって良かった』と言ってもらえる。もっと多くの人にブランドを広めるための力になりたい」と語る。

(繊研新聞本紙23年8月16日付)

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