《小関翼スタイラーCEOのファッションテック考現学⑥》店舗基点の配送と受け取り

2022/08/22 06:27 更新


 これまでは、オンラインで注文して、店頭で商品を受け取るBOPISサービスについて、事例とともに様々な背景を述べてきました。スマートフォンの普及に伴い、インターネットが街での行動に利用されるようになったのです。BOPISの主な利用理由は手間や時間の節約です。となると、各ブランドが提供する個別アプリや、EC事業者によるBOPISの提供は、ユーザーにとってはむしろストレス。だから、全世界的にECとは別のプラットフォームが立ち上がっているのです。海外にはたくさんありますが、当社の「フェイシー」もその一つです。

 北米を中心に大きく小売業界を刷新しつつあり、日本の消費者の30%が利用を希望するBOPISですが、実はあるアイデアと表裏の関係にあります。それが本日紹介するマイクロ・フルフィルメントです。

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■店舗に物流機能

 マイクロ・フルフィルメントは、フルフィルメントの一種です。EC業界においては、ユーザーからの受注、商品梱包(こんぽう)、発送、商品受け渡し、代金回収、カスタマーサポートといった一連のバックヤード業務をフルフィルメントと呼び、顧客体験の改善の要とされてきました。例えば、古典的なEC事業者は、地方に大型の集中倉庫を持ち、数日かけて購入者の住所まで配送を行います。一方、マイクロ・フルフィルメントは、都市部に分散する店舗や小型倉庫を配送拠点とします。ユーザーは注文したその日(30分~数時間以内)に商品を受け取ることができるのです。提供会社によって様々な目的がありますが、次の三つが代表的なものになります。

①オンラインから集客

 スマートフォンの登場以降、消費者が地域の商品やサービスを購入する際に、インターネットで調べてから行動するのが日常になっています。インターネット上で店内の在庫を可視化するのであれば、店舗から配送することは珍しい発想ではありません。一昔前であれば、商品認知と購買がメディアとコマースに分かれていましたが、徐々にコマース・アプリから直接情報を取得する消費者が増えています。

②オペレーションの効率化

 古典的なECは地方の集中倉庫から都市部の顧客まで配送を設計しているので、当然無駄が発生します。また、国内でのEC物流が増加すればするほど、梱包や長距離配送のコストも上昇することになります。マイクロ・フルフィルメントでは、配送先の住所と店舗在庫の位置情報をスマートに管理して、同日配送を目指します。当然、出店計画も店舗がカバーできるエリアを中心に検討するので、店舗間の顧客の奪い合いが少なくなります。

③顧客体験の向上

 顧客体験の観点で、同日配送は古典的なECのフルフィルメントと大きく異なります。なぜなら、配送が翌日以降になると、消費者自身が受け取りを完了するのに努力を払う必要があるからです。例えば、受け取るのに自分の予定を調整したり、数日かけて届いた商品が不要なものだった不満は大きなストレスになります。

■使い分けの基準

 既にこの二つのアイデアによって、世界の小売市場は刷新されています。どのように使い分けられているかというと、主に取り扱われる商品とその地域の配送コストが関係します。より店舗で商品を体感したいものについてはBOPIS、よく知る日用品についてはマイクロ・フルフィルメント。人件費が高く、配送コストを売り手も買い手も負担したくない場合はBOPIS、逆であればマイクロ・フルフィルメントといった具合です。

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