カシミヤをもっと白く、東洋紡糸工業

2015/11/26 06:58 更新


 カシミヤ紡績の東洋紡糸工業は、動物繊維の物性や風合いを維持しながら、白度を高める紡績技術を確立した。16~17年秋冬向けから、「E‐FILU」(イーフィール)として本格的に糸売りを始める。

 耐光堅牢度など物性の問題で従来日本では難しかった白のバリエーションや、鮮やかな色の表現が可能になる。グランフロント大阪で27日まで、東京・日本橋の同社東京事務所で12月1~4日、7~11日に開く展示会で披露する。

 一般に動物繊維の白度を上げるには、アルカリにさらしたり、せっけんで洗毛するなど、繊維を傷める工程を経なければならず、耐光堅牢度や風合いの劣化が避けられなかった。イーフィールは、温度や湿度、機械のスピード、開毛などあらゆる工程を見直して生まれた独自の紡績技術を採用し、繊維を損傷させることなく、「生まれたばかりの繊維の状態を再現」。

 白度を高めながらも、ふっくらとした膨らみを持たせ、耐光堅牢度3級をクリアした。白の明度は、上白紙と同等。毛羽が出にくいために目面がきれいに上がり、上品な光沢がでる。発色性に優れるため、鮮やかなカラーの表現も可能だ。杢糸も、従来品ではやや黄色みがかるが、イーフィールでは、白度の高い白が入り混じるため、洗練された表情に仕上がる。

 糸は、主力のカシミヤのほか、カシミヤ・シルク複合、ウールを展開する。一部は、カラーストックして販売する。色鮮やかなウールやカシミヤが豊富に揃う伊をはじめ、欧州市場でも通用するとみて、海外での販路開拓も視野に入れる。川端徹社長は「国産糸の生産量が減り、産地は疲弊している。新しい技術を核に国産比率を高めたい」と拡販に向けて意欲的だ。



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