「焼き入れ」という言葉がある。刀鍛冶(かじ)が、熱した刀をより強くするために水で冷却し強い刀を作るものだ。外資系企業など経営者が変わると、焼き入れのように急に方針や人事を変更することがある。すると「焼き割れ」を起こすケースも出てくる。企業経営を行うには、目的意識・価値観の末端までの共有と、人や組織の強い結びつきが必要だ。そういう土台があってこそ焼き入れが成功する。
あるODM(相手先ブランドによる設計・生産)企業は今年、生き残りをかけた〝焼き入れ〟施策を打ち出した。協力工場と社員の質の向上に向けた方策を打つ。
工場には存在価値を持って未来をともに築けるよう、CSR(企業の社会的責任)認証を受ける取り組みをともに進める。社長は就任後、3年に渡り月2回ペースで出張し海外50工場と話し合ってきた。今年は、工場を5段階でランク付けする〝焼き入れ〟を行う。
社員は企画と営業を兼ねる。そのため月1回のプレゼン訓練を始めた。個々の到達点を明らかにし、向上を図るための〝焼き入れ〟だ。同社は環境が厳しいなか、健闘している。組織を鍛えるために焼き入れをどのように進めるか、トップの手腕が問われる。(稔)