記者が担当する合繊メーカーはいずれも、いわゆるオーナー企業ではないため、年度替わりの春が近づくとトップ人事の行方をチェックしておかなければいけない。
しかし、昨年来のコロナ禍で各社は事業に大きな影響を受け、今後の先行きも見通しにくいため、さすがに今春は社長交代はなさそうだと踏んでいたが、クラレや東洋紡など意外にも複数の企業で社長交代が発表された。
経営トップには時代の先を読んでジャッジする力や、人を生かす力などが求められ、単純に若さだけを尺度に測るべきではないのかもしれないが、社長交代を決めたこれらの企業はこの困難な時代のかじ取りをいずれも50代に託し、変化を選んだ。
企業を船に例えるなら、視界の悪い嵐を航行している最中、若手の船長に交代するようなもの。そのリスクもあるのではと心配してしまうが、逆にこの嵐では古参船長が過去の経験だけで操縦するのも危ういのかもしれない。いずれにせよ、正確な羅針盤を持ち合わせていることが航海の大前提だ。
(恵)