立て続けに「ザ・80年代」を感じている。2月末に発表した「エンポリオ・アルマーニ」のデジタルショーがその一つ。黒バックの会場に、ブランド名のカラフルなネオンサインが設置されていた。パープルやビビッドピンクの色合わせは、当時のマドンナのアルバムジャケットを見ているようで、弾けるディスコポップといった感じ。タイムスリップしたようだった。
翌日。渋谷のホームですれ違った女子高生が、聖子ちゃんカットをしていた。実物を見たのは実に30年ぶり。松田聖子を発信源に一世を風靡(ふうび)した髪形を、街でまた目にすることになるとは。思わず二度見してしまった。こちらも日本の80年代を代表するものの一つ。ボブカットのサイドの髪をきれいに巻いて、ふわふわと後ろに流すのが特徴だ。笑顔の彼女によく似合っていた。
80年代ブームはここ数年、続いている。映画や歌謡曲、デザインなどで、当時の感じを取り入れたものをよく目にする。しかし、どこか表舞台ではなく、好き者向けといった感じがしていた。個性が強すぎるため60、70年代といったヒットコンテンツにはなりえないと。しかし、その強さが今、魅力的に映る。鬱屈(うっくつ)とした今に打ち勝つパワーになるのかもしれない。
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