《視点》年間36件

2021/04/21 06:23 更新


 「年間36件」。ある大手住宅メーカーのトップセールスの新築契約件数だ。業界が違うため指標を聞いてみると、「年6件契約を取れば会社から何も言われずに過ごせる」。この営業マンは2位以下を引き離してぶっちぎりの1位だそう。

 なぜこんなに売れるのか。一つ面白いエピソードを教えてもらった。コロナ禍前は社内の飲み会が頻繁にあったらしいが、「宴席で殴り合い、取っ組み合いがおなじみの光景」だったそうだ。

 お目当ては顧客名簿。住宅展示場に来店した見込み客は1人で接客するだけでなく、数人にまたがって接客するケースがある。その見込み客を誰が担当するのか、それをめぐって争うそうだ。そのトップセールスは酒の勢いもあって「この客は俺が担当する」と先輩に食って掛かり、ついには先輩、後輩問わず口論になり、殴り殴られ、30代にして断トツのトップの座をこの数年キープしているそうだ。

 服を売るのが難しい時代だ。しかし、売れないのを環境のせいだけにしていないだろうか。暴力は絶対にダメだが、「この顧客を担当するのは自分だ」。そんな気概があれば、服はもっと売れるように思う。

(森)



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