「コロナ後は、万人の役に立つ物の大量生産ではなく、受け手に新しい価値観が生まれ、一定の人から共感を得られる提案が重要になる」と、ある講演で著作家の山口周氏が話していた。
例えばイケアは、イスラエルの障害者支援団体と共同で、家具に後付けする障害者向け専用パーツを開発。3Dプリンターで作れ、指が動かなくても食器棚を開閉できる大きな取っ手、ソファを使いやすい高さに調整できる付属品など10種類以上あり、19年に提供を開始した。
3Dプリンター用データは、同社の公式サイトから無料でダウンロードが可能。付属品を作製し、イケアの家具に取り付けるだけで、各自の障害に合わせてカスタマイズできる優れもの。付属品のデータは無料で提供しているが、家具の既存商品の売り上げ拡大に貢献しているそうだ。
同社は「誰もが気に入った家具に囲まれ、より快適に暮らす」という企業理念を基に、この付属品を開発した。「ありたい姿を描き、現状と照らして問題点に気付かないと、新たな価値は提案できない」との言葉に、改めて理念の重要さと、掲げるだけでなく現実に落とし込み、新たな問題解決策を地道に探る作業が大切なことを実感した。
(陽)